ホーム > 国立競技場を知る > 過去の刊行物 > 『国立競技場』2010年 > -第6回JISS  スポーツ科学会議開催―

-第6回JISS  スポーツ科学会議開催―

実行委員長 小松 裕
国立スポーツ科学センター 医学研究部

2010年1月23日、国立スポーツ科学センター(JISS)において、「Supporting best ―世界で勝つためのスポーツ科学―」をテーマに第6回JISSスポーツ科学会議が開催されました。

インターネットシンポジウムの模様
インターネットシンポジウムの模様

参加者は345人と昨年と比べ大幅に増加し、会場となったJISS研究体育館は熱気に包まれました。海外から3名の研究者をお招きし、三つのセッションに分け、それぞれの招待講演に引き続き、それに応じたシンポジウムでJISS研究員による講演と活発なディスカッションが繰り広げられました。途中、昼休みにはJISS課題研究、委託研究、工学研究、プロジェクト研究、スポーツ情報サービス事業のポスターでの発表も行われ、訪れた関係者、研究者にJISSの研究活動を知っていただくと同時に活発な議論も行われました。

シンポジウム1 では、ドイツIATのMatthias Englert氏の「ライプツィヒIAT(応用トレーニング科学研究所)によるカヌー競技におけるトレーニング科学サポート」と題した講演に引き続き、オリンピック・ロンドン大会に向けたJISSの取り組みとして「カヌースプリントナショナルチームの現状と今後の課題(池田達昭、烏賀陽信央)」、「バドミントンナショナルチームに対するJISSサポート活動(飯塚太郎、守田誠)」の発表があり、Englert氏を交え、科学研究部の平野裕一の司会でロンドンに向けた科学的サポートについての議論が行われました。

シンポジウム2では、スペインCARのJosep Escoda氏による「ハイパフォーマンストレーニングと主要大会における応用技術―未来に向けたIPブロードキャストからのアプローチ」と題した、スペインハイパフォーマンスセンター(CAR)におけるテクノロジーを駆使した様々なサポート活動についての紹介があり、引き続いて、スポーツテクノロジー:JISSの取り組みとして、「慣性センサによる運動計測の可能性(市川浩)」、「映像システムの開発と練習への応用(吉田孝久)」の発表があり、科学研究部の宮地力の司会で新しいスポーツテクノロジーについての議論が行われました。

会場風景
会場風景

シンポジウム3では、まず、英国UK SportのLiz Nicholl氏の「UKスポーツ ワンチーム・ワンミッション-2012年に向けて万全を期す」と題した、ロンドンオリンピック、そしてその先に向けた英国の戦略的な取り組みとその成果についての講演がありました。ロンドンオリンピックの開催が決定したその日から英国のスポーツを取り巻くすべての環境に大きな変化があったこと、そして「One Team, OneMission」のスローガンのもと、すべての関係団体がロンドンオリンピックにおけるオリンピックランキング4位を目指して一丸となって取り組んでいる様子について詳細に話をしていただきました。

また、UK Sportは競技団体に投下される公的資金を有効活用する責任が伴うと自覚してもらうのが重要と考えていることや、パフォーマンスを効果的に向上させていくのに必要な「競技団体自身のガバナンス力」を強化するために「Mission 2012」という競技団体評価を実施し、その結果で競技団体への財政支援の配分を決定していることなども紹介され、日本としても大変参考になる内容でした。

引き続いて、「エリートスポーツにおけるU K-日本のネットワークの可能性と成長」と題したネットシンポジウム、すなわちJISSの会場と独立行政法人日本スポーツ振興センターロンドン事務所をインターネット回線でつなぎシンポジウムを行うという、JISS科学会議として初の試みが行われました。

情報研究部の和久貴洋がコーディネーターとなり、Liz Nicholl氏、ラフバラ大学Chris Earle氏と、JOCのNTC拠点ネットワーク・情報戦略事業ディレクター杉田正明氏、日本スポーツ振興センターロンドン事務所所長の高橋雅之、情報研究部の山下修平がパネリストとして参加して、「世界で勝つとはどういうことか」を軸にネットワークの構築についてのディスカッションが行われました。日本スポーツ振興センターロンドン事務所の高橋氏は、スポーツ界においても「Amount of money からValueof money」へ転換させていかなければならないこととともに、価値を生み出すものは優れたシステムであると述べ、Liz Nicholl氏は、「勝つこととは何か」は相対的な観点からそれぞれの国で定義していかなければならないことであるが、同じビジョンとゴールを持ち、同じ意識で向かうからこそ生まれるネットワークは非常に重要であると語りました。

会議は昨年より130人も多い345人に参加をいただき、講演やシンポジウムの内容も大変充実したものでした。JISS・日本スポーツ振興センターとしても、国際競技力向上に向けた役割を再認識する内容でした。

また、初めての試みであるロンドンとのネットシンポジウムも問題なく行われ、同時通訳や映像提示を含め、会議自体も大変スムーズに進行しました。JISSスポーツ会議にかかわっていただいた多くの職員のご尽力に感謝したいと思います。

 

ページトップへ