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スポーツ施設の安全管理 ~第3回~「事故後のポイント」

瀬戸口 祐剛
セノー株式会社 営業本部・企画部・企画課長
財団法人 日本体育施設協会 スポーツ施設研究所 専門委員

 事故(怪我・転倒・病気・故障・出火)が発生した場合は、事故が事件に発展しないように、リスクを軽減させるための行動を心がけます。そのためには、日頃から必要な知識と技術を幾多の研修により身に付け、緊急時にあわてることなく的確な判断での措置が求められます。

 今回は、救護と二次災害(救護職員と被害拡大)防止のポイントについて述べたいと思います。

スポーツ施設の安全管理 タイトル

(1)迅速な行動

 一刻を争う緊急事態に対処すべく、できるだけ短い時間で効率よく行います。まずは人命の安全確保が最重要となります。

 一人で全ての対応するのではなく、インカム(無線機)等により協力者を求めることも早期対処の要因となります。迅速な行動をとるためのマニュアルと日常的な予行演習(防災訓練など)やスタッフで役割分担を清掃・警備・設備・植裁の委託業者等を含めて明確にすることで対応可能となります。

(2)的確な状況把握

 何が起きているかの状況の一次確認(観察・意識の有無)や実際の事故の状況を聞き取ることで次の行動に移します。曖昧な状況確認や判断では、その後の全ての対応に影響を与えるため、事前に状況確認のための項目を決めておくことも良いでしょう。(基本的事実のみ収集/後の詳細把握(報告書作成)に証言者確保など)

(3)措置の判断

 第三者対応として、立ち入り禁止措置・避難誘導や物損被害拡大防止として、消火・障害排除を行います。怪我等がある場合は、「命に関わるものか、急がずに対処してよいか」判断します。

 同時に傷病者(事故者)の安全確保(手当てができる場所へ移動や周囲の誘導など)を行います。防犯や防災内容の状況を、速やかに110番か119番を判断し通報します。救急搬送に該当しない場合でも、必要に応じて医療機関に搬送します。脳障害、心臓障害は初動医療が重要(応急処置、人工呼吸、AED……)となります。

(4)連絡・通報

 どこに、どのように連絡・通報するか判断します。内容は「いつ・どこで・だれが・どうして・どうなった」など明確に伝えます。傷病者(事故者)の家族への連絡が必要な場合は、誠意ある言葉と態度で対応し、精神的ショックを与えないよう細心の注意を払います。事態を正確に伝え、個人の推測を交えた表現や感想は慎みます。緊急連絡体制の確立が必要不可欠です。

(5)事故の報告と対処

 事故発生時には、現場担当者が時系列に記録を残し、手当てや対応について具体的に記述します。関係者(団体最終責任者及び施設所轄担当部署)へ事故報告書をまとめ速やかに報告し情報を共有します。事故報告書は議会報告や各種保険に必要となる場合があるため取扱いには注意してください。

  事故後は、施設利用者が不安に陥ることがないように配慮が必要です。事故の概要を可能な範囲で説明することや安全対策の見直しで再発防止に取り組みます。また、事故に直面した現場担当者の精神的な負担への配慮も必要です。

(6)保険の適用

 スポーツ安全保険は、傷害保険・賠償責任保険・共済見舞金などがあります。

  • 傷害保険:怪我をされたとき ・賠償責任保険:賠償責任を負うおそれのある事故を起こされたとき
  •  
  • 共済見舞金:突然死(急性心不全、脳出血など)されたとき

 共通して保険の手続きに必要なのは、事故報告書(日時・場所・原因・状況)を保険会社やスポーツ安全協会へ提出します。そこで保険金額が算出されます。算出された保険金額とその根拠を傷病者(事故者)に説明すること重要です。 (スポーツ安全保険に関しては財団法人スポーツ安全協会へ)

 事故後(事故発生時)の対処のポイントについて述べましたが、これまでの事故例を「予見の可能性」と「結果回避の可能性」から分析することが、今後の対応策を探る最も有効な方法となります。

(次回は「スポーツ施設用器具の維持管理」についてです。)

 

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