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フットサル日本一決定戦にみる、大会開催に適した施設について

~財団法人日本サッカー協会 大仁邦彌 副会長インタビュー~

 3月12日から14日までの3日間、PUMA CUP2010第15回全日本フットサル選手権大会決勝トーナメントが国立代々木競技場第一体育館で開催されました。

2007年9月にFリーグ(日本フットサルリーグ)が開幕してから3年が経過し、全国で楽しむ方が急増するなど盛り上がりを見せているフットサルですが、そのフットサルの日本一を決める熱い戦いが繰り広げられる中、大会を主催する財団法人日本サッカー協会副会長で、フットサル委員長を務められている大仁邦彌(だいに・くにや)氏にお話を伺い、主催者の立場からフットサル大会を開催する施設に関する考えや、日本のフットサル界の展望について語っていただきました。

〈今大会の概要について〉

国立競技場(以下「国立」):本日は大会開催中のお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。まず始めに、今大会の概要について教えてください。

大仁氏:15回目を数える全日本フットサル選手権は、2005年からPUMA CUPとして開催しており、フットサルの日本一を決める大会です。大会自体も年々充実してきました。
今大会は、全国の地域を勝ち抜いた9チームに、Fリーグの9チーム(2009シーズン優勝チームの名古屋オーシャンズは、AFCフットサルクラブ選手権イラン2010に出場のため欠場)、そして前年度の当該大会予選参加チーム数が多い地域から6チームの合計24チームが1次ラウンドを戦い、勝ち抜いた8チームがここ代々木第一体育館での決勝トーナメントに進出しました。すべてFリーグのチームが勝ち上がって来ています。

国立:すべてFリーグのチームということですが、Fリーグがスタートしたことによって全日本フットサル選手権にも何らかの変化があったのでしょうか。

大仁氏:Fリーグがスタートした年の全日本ではFリーグのチームが優勝しましたが、昨年の優勝チームは関東地域の代表チームでした。今大会はFリーグ勢が勝ち抜いてきましたが、全体のレベルが上がってきたということは言えると思います。

〈フットサルの裾野の拡大〉

国立:フットサルを楽しんでいる方が全国的に増えていると思います。

大仁氏:そうですね。今、日本サッカー協会に選手登録しているのは13万人強で女子も約3万人います。そのほか、選手登録はしていないけれども、民間施設でフットサルを楽しんでいる方は200万人とも言われており、裾野は広がっています。
フットサルが人気なのは、サッカーと違って小さなスペースで、5人集まれば出来るという取組みやすさや、とりわけ女性にとっては、体育館や人工芝で行うのでグラウンドと違って汚れないといったことがあります。

〈第一体育館を利用する理由〉

大仁邦彌 副会長 写真その1

国立:さて、今回開催されている全日本フットサル選手権決勝トーナメントは第13回以降、代々木第一体育館で開催されています。この大会を代々木第一体育館で開催するポイントは何でしょうか。

大仁氏:まず、9000を超えるスタンド席があり、多くのお客様に観戦していただける集客力のある体育館であることです。また、スタンドとピッチの距離が近く、フットサルの迫力を間近で感じることができるのも大切なポイントです。

国立:代々木第一体育館はアクセスもよく、観戦に訪れるお客様の利便性も高いところは評価していただけると思います。

大仁氏:そうですね。ただ、代々木第一体育館は施設が大きいので大会警備が大変ではありますが(笑)。
いずれにせよ、代々木第一体育館はフットサルの専用施設に近いいい施設だと思いますし、代々木が日本のフットサルのメッカとなればすばらしいですね。

〈大会に必要な設備について〉

国立:フットサルの大会を開催する場合、特に必要な設備等はありますか。

大仁氏:今回、大型映像装置を改修していただきましたが、非常に素晴らしい設備であると感謝しています。
特にフットサルの場合、競技の特性として非常にスピーディーな展開で試合が進むため、最も重要なゴールシーンが観客の皆さんからわかりにくいというケースがあります。そのため、すぐにリプレーが映し出せる大型映像装置の存在は大きいですね。
さらに、代々木第一体育館にはVIPなどを迎える場合の貴賓室などが整っていることが、主催者側から見ても利便性が高いと感じています。国際大会などではVIPを受け入れるための対応が必要になりますし、特に今大会でも14日の決勝戦当日に高円宮妃殿下をお迎えする予定ですが、安心して対応することができます。

国立:逆に、代々木第一体育館に足りないものはあるでしょうか。

大仁氏:例えば、選手がウォーミングアップするためのサブアリーナ、または十分なスペースがあれば有難いです。
大会の運営上、次の試合が始まるまでの時間があるので、選手が身体を動かして試合に備えるためのスペースがあると、選手にとっても感覚を鈍らせることなく準備ができて助かります。

国立:フットサルは全国各地で楽しまれており、フットサル専用アリーナも整備されてきました。専用アリーナと体育館では大会の開催に当たって使い勝手など違いはありますか。

大仁氏:選手にとっては、体育館でも全然問題ありません。ただ、体育館には様々な種目のコートラインを引いてあることが多いため、フットサルの大会を開催する場合は、まずそのラインをテープで隠してからフットサルのピッチを作ることになります。

〈施設に関する基準づくりも視野に〉

国立:サッカーでは、スタジアムに関する基準が設けられているようですが、フットサルで使用する施設に関しても今後何らかの基準づくりをお考えでしょうか。

大仁氏:私は以前、日本サッカー協会施設委員長を務めていましたが、競技を行う上での必要な施設の基準は必要だと思います。フットサルについても、今後は施設に関する基準づくりも考えていきたいと思います。

国立:施設に関する基準については、全国のスポーツ施設にとっても大変関心のある部分だと思いますので、今後基準を策定される際には広く情報を発信していただければと思います。

大仁氏:そのようにしていきたいと思います。

〈フットサル界の今後の展望〉

大仁邦彌 副会長 写真その2

国立:最後に、これからのフットサル界の展望をお伺いしたいと思います。

大仁氏:今、4年に1回世界選手権が開催されています。過去にアジア選手権(AFCフットサル選手権大会)は日本で開催したことがありますが、世界選手権を開催したことがないので、日本でぜひ世界選手権を開催したいと考えています。
そのためには、フットサル日本代表の強化もさらに進めなければなりません

国立:世界の中で、日本はどのぐらいの位置にあるのでしょうか。

大仁氏:AFCフットサル選手権大会では過去に一度だけ優勝したことがありますが、過去2回出場した世界選手権ではこれまですべて1次リーグ敗退ですので、世界の中ではまだまだ実力を上げていく必要があります。
日本代表は月に1度、定期的に集まって強化をしていますので、5月にウズベキスタンで開催されるアジア選手権に向けて努力し、日本代表が活躍する姿を皆さんにお見せしたいと思います。

フットサルの全国的な普及に合わせて、各地のスポーツ施設ではフットサルでの利用も増えていることでしょう。今回のインタビューでは、全日本フットサル選手権を題材に、大会を開催する場合の主催者側からみたポイントや必要となる施設について、貴重なお話を伺うことができました。

今後も、施設を利用する立場からの様々な意見を伺いながら、施設整備の方向性を検討していきたいと思います。

 

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