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ブレイクダンス世界大会 Red Bull BC One Tokyo 2010 開催

 2010年11月27日、国立代々木競技場第二体育館にて、ブレイクダンスの世界大会「Red Bull BC One Tokyo 2010」が開催されました。

1対1のダンスバトル
1対1のダンスバトル

 スポーツ競技大会を中心に様々な行事に利用されている第二体育館ですが、昨年の1月9日に開催された「BMX Flatland World Classic 2010」に続く、マイナーではあるものの、若者やスポーツ愛好者からの注目度が高いスポーツの世界大会であり、設営も大掛かりになることから、主催者と何度も打合せを行い、安全に開催されるよう特に注意しながら準備を進めていただきました。

大会概要について

 本大会は、エナジードリンクブランドの「Red Bull」が2004年から開催し、今年で第7回目を迎える歴史ある大会です。ブレイクダンスのエキスパートたちによって、ダンスの技術、本人のキャラクターなどを総合的に検証し選出された世界トップクラスの16名が出場し、ブレイクダンスの世界№1 の座をかけ、1対1のトーナメント方式で行われました。

 満員の会場は、B-Boyと呼ばれるダンサーたちの力強く、ダイナミックなパフォーマンスに何度も沸きました。観客は、技術、筋力、柔軟性などが必要とされるブレイクダンスに終始魅了されていたようで、選手と観客が一体となった素晴らしいイベントでした。

 なお、栄えあるチャンピオンに輝いたのは、ブラジルのNEGUIN(ネギーン)選手でした。

出場国(11カ国)
日本、ポルトガル、韓国、アメリカ、オランダ、ブラジル、フランス、ポーランド、ベネズエラ、アルバニア、ウクライナ
これまでの開催地
  • 2004年 ビール/スイス大会
  • 2005年 ベルリン/ドイツ大会
  • 2006年 サンパウロ/ブラジル大会
  • 2007年 ヨハネスブルグ/南アフリカ大会
  • 2008年 パリ/フランス大会
  • 2009年 ニューヨーク/アメリカ大会
          (※ブレイクダンス発祥の地)

 チケットは発売早々完売となり、開催日には、近隣の別会場でパブリックビューイングが行われるほどの人気でした。また、大会の模様はインターネットのほか、香港、オーストリアのテレビ局で生中継され、国内でも音楽専門チャンネルのスペースシャワーで1時間番組として放送されるなど、多くの観衆の期待に応えてくれる形がとられました。

大会環境について

 第二体育館では、ほぼ毎日行事が行われているため、今大会はたった2日で設営を行わなければならないという状況でした。

 まずアリーナには、フロアシート、コンパネ、ビニールシートの順に三層の養生が施され、中央部分には直径8mの円形のステージが組まれ、ステージを取り囲むように900席余りの観客席が並べられました。

 また、第二体育館の天井は機材等を直接吊り下げることができないため、床置きされた四本の支柱によって支えられるグランドサポートを利用して、円形のトラスをステージ上に設置し、照明や音響設備が配置されました。さらに、スタンド席のおよそ2ブロックを使用して、300インチのスクリーンが2ヶ所設置され、試合の状況が随時映し出されていました。

 第二体育館は、この大がかりな設営により様変わりし、高揚感をかき立てられる会場となりました。

諸室について

VIPラウンジとなったロビー
VIPラウンジとなったロビー

 今回のイベント開催に当たって、第二体育館の諸室は限りがあり十分ではなかったため、会議室を出場選手のラウンジとして利用することになりました。また、ロビーにはレッドカーペットとドリンクテーブルが設置され、VIP のホスピタリティラウンジとして開放されました。その他の諸室である、更衣室、来賓室、応接室等は、選手をはじめ、出演者ほか関係者の方々の控室として利用されました。

インタビュー

 大会のプロデューサーである株式会社インターナショナル・プロモーション・サポートの小泉氏に、代々木競技場を 会場として利用した感想などを伺ってみました。

1.第二体育館で開催された印象をお聞かせください。

会場全体図
会場全体図

 使いやすい点は、今夏の改修工事によりエントランス外の石畳の凹凸が少なくなり、広々とした会場エントランスが有効利用できるようになったことと、床加重が大きく、重量物の設置ができたことです。そして、魅力は、国内に数少ない円形劇場スタイルであることです。

 使いにくい点は、天井からの吊り点がない為に多くのプランを作成し、検証する必要が生じたことです。もう一つ、専用搬入口が無いために、大きな荷物の搬入に苦労しました。

2.大会開催に至るまでに苦労された点をお聞かせください。

 まず、丹下健三氏の設計による現代史に残る建築物である第二体育館のイメージを崩さず、会場内はもとより外観・控え室・裏導線に至るま で、既存の特異な形状をあえて生かした演出で装飾を施工し、如何にイベントのイメージと融合させることができるかを熟考しました。次に、体育館という性格上、特にアリーナ床面およびアップスペースなどの養生に配慮しました。

 課題として、国際的なイベントで あるため、海外からも多くのスタッフやメディアが来日し、控え室やホスピタリティなどスペースの不足がありましたが、建物全体を可能な限り利用させて頂き、解決しました。

 また、アリーナ部分に、既存のスタンド席まで続く円形の仮設スタンドを設置したため、客導線の混乱を最小限に抑えることと、避難導線の確保に苦慮しました。 最後に、海外へのテレビ番組生中継および番組収録で、画面へのグランドサポートの映り込みを無くすため、カメラ側の開口を大きく取ったことにより、吊り込む機材の重量制限が生じ、演出プランとの調整・検討に長時間を要しました。

3.関係者の声をお聞かせください。

ステージ・観客席づくり
ステージ・観客席づくり

 設営業者は、「会場への専用搬入口がないために、多くの養生が必要となり、さらに、車両からの荷下ろしスペースが少ないために、搬出入に時間が取られてしまう。また、アリーナの耐加重が大きいために、大型のトラスなどが搬入できる半面、重機などが搬入できないので、すべて手仕事となり、効率化が図れず、コストアップにつながってしまう」と話していました。その他、スタッフからは、「催事電源の電源容量が中途半端であり、電源車を導入しなくてはならないため、もう少し大きな催事電源が欲しい」という声がありました。

 代々木競技場では、利用者のニーズに対応できるよう施設の整備を行っておりますが、今後も現状の施設を最大限活用しながら、不足している点については、利用者の要望に対応できるよう努力していきたいと考えています。

(写真:©IPS Inc.)

 

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