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国際オリンピック委員会専門家グループによるアスリートのサプリメント使用に関する声明


 サプリメントには、必須栄養素(ビタミン、ミネラル、タンパク質、アミノ酸など)、ハーブ、植物をはじめ、健康維持やパフォーマンス向上が見込まれる成分など、幅広い製品がある。サプリメントの使用は一般人だけでなく、トップアスリートの間でも広がっており、使用の理由もさまざまである。しかしその理由は、自分の問題に対する明瞭な理解ではなく、根拠のない信念に基づいていることが多い。また栄養学の専門家ではなく、影響力を持つ人物からの勧めによる場合もある。アスリートが使用するサプリメントの世界共通の分類法は存在しないが、サプリメント(またはその用途)を、特定の栄養素の欠乏を補う製品、スポーツフーズ、パフォーマンスサプリメント、健康・適応・肉体改造のための製品に分類すると参考になるだろう。

 サプリメントは、適切に使用すれば有益となりうるが、一方で健康やパフォーマンスに有害となるものも存在する。サプリメントやスポーツ関連食品を使用する長所には、便利さと、重要な栄養素の摂取量が分かることが挙げられる。例えば筋肉やその他の組織の形成を促進するために、トレーニング後にプロテインサプリメントを使用する場合である。サプリメントは、リスクが低く健康やパフォーマンスへの利益が見込める場合にのみ考慮すべきであるが、多くのサプリメントには十分な根拠がない。公表されている研究の多くは、不適切な実験モデルや、トップアスリートを反映しない被験者集団を対象としているので、スポーツに特化したサプリメント研究を適切に実施する必要があるだろう。またエビデンスの評価には、交絡変数やバイアス、アスリートの実際の習慣に対する適合性、使用したサプリメントの成分の照合の必要など、研究デザインの潜在的限界を考慮する必要もある。さらにサプリメントによるパフォーマンスの変化について、何が競技結果に意味があるかという観点から解釈すべきである。しかし「効能の証拠がない」ということは、「効能がないという証拠」ではないということに留意する必要もある。

 栄養アセスメントは、食事戦略や医学的な見地からのサプリメントの使用について、アスリートに助言を与えるための第一段階である。栄養アセスメントにあたっては、栄養上の問題や、その原因と重要性の特定に必要なデータの体系的な収集、検証、解釈をしなければならない。完全に評価するには、食事評価、身体組成分析、生化学試験、栄養に関連する臨床検査、対象者の健康とパフォーマンスに関する履歴が必要となる。また、熟練度、性別、人種、文化を考慮すべきである。特定の栄養素については有効で信頼できる検証方法もあるが、どのような検証方法にも、限界と不確実性があることを認識しなければならない。

 アスリートが熟練しており、競技に参加できる準備ができていて、良好なトレーニング、リカバリー、栄養プランを実施している場合に限り、さらにわずかな利益を追及する目的で、パフォーマンスサプリメントを使用すべきである。サプリメントには、一部のアスリートにパフォーマンス上の利益を与えるものもあるが、その使用には慎重な評価が必要である。複数の運動モデルにおいて、効能が立証されているサプリメントには、炭水化物、たんぱく質、カフェイン、クレアチン、緩衝剤、硝酸塩などが挙げられる。競技パフォーマンスを制限する生理的要因への作用や、中枢神経系への効果により、効能がもたらされる場合もある。個人とその運動モデルによって効果は異なるため、サプリメントを競技で使用する前に、トレーニングや競技シミュレーションにおいて十分に試す必要がある。事実、期待するパフォーマンス向上効果よりも、有害反応が上回ることがある。

 サプリメント使用で起こりうる危険性への認識は高まりつつある。アンチ・ドーピング規程における禁止物質が含有されていた場合、それを意図せずに摂取してしまうことがあるためである。場合によっては、含有されている禁止物質や有害物質が、あらゆる消費者の健康に危険を及ぼすレベルであることもある。また含有物が健康やパフォーマンスに影響がないほど少量であっても、アンチ・ドーピング規程違反となる場合もある。こうした問題は、品質保証が不適切である場合や、製品に効力がないことを隠すために意図的に禁止物質が混入されている場合に生じる。

 オリンピックや高いレベルの大会に出場するアスリートは、エリートスポーツの重圧や成功後の大きな報酬に惑わされ、安全で合法な戦略と聞けば効果がごくわずかであってもそれに飛びついてしまうことがある。サプリメントには、パフォーマンスを大幅に向上させられると謳うものも、ライバルに遅れをとる恐れを焚きつけるだけのものもある。よってサプリメントの使用にあたっては必ずリスク便益分析をするべきであるが、多くのエリートアスリートはサプリメントが謳う効能のエビデンスはほとんどないという事実よりも、競技で成功という報酬を優先し、誤解して信じている。しかしアスリートは、アンチ・ドーピング規程違反のもたらす悲劇的な結末を認識すべきである。栄養素の摂取が難しい場合や、食事の変更が不可能な場合の短期的な戦略として使用する以外、日常の不適切な食事を補完するために使用するべきではない。品質保証が十分な製品であっても、故意でないドーピング違反のリスクを完全に排除はできない。若いアスリートなどの被害に遭いやすい人には特に、正しい情報に基づいてサプリメントを使用するよう支援する必要がある。一般的に若いアスリートは、保証表示がある栄養について完全な評価が行われていない限り、使用を控えるべきである。

 第一に優先すべきは、アスリートの健康の保護、ならびに有害である可能性に対する認識である。そのためサプリメントの使用についてアスリートが合意し、決定する前に、専門家の支援が必要である。

 

スイス、ローザンヌ 2017年5月5日

「国際オリンピック委員会専門家グループによるアスリートのサプリメント使用に関する声明」の原文


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