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スポーツ医科学論壇

第9回 スポーツ情報で扱う映像についての課題


宮地 力(スポーツ情報研究部)

 

宮地 力  国立スポーツ科学センターは、スポーツ科学、スポーツ医学と、スポーツ情報の3つの柱からなっている。科学、医学については知られているが、スポーツ情報 については新しい分野であり、あまり知られていないようである。そこで、「スポーツ情報」のなかでも、映像に関連する話題をとりあげ、今後どういうことが 必要かについて述べたい。

  スポーツの技術指導をする時に、文章だけでは伝わらない情報が多くある。1つは、時間的な情報である。この時間情報があれば、速度の情報、また加速度の 情報も伝えられる。加速度がわかれば力の入れ方の情報も伝わる。分解写真をみても動きを覚えられないのは、動作の形だけで時間情報がないからである。例え ば、スキーのウェーデルンの分解写真を見ても、なかなかその動きのイメージがつかめないことなどを思い出していただければわかるであろう。

  コンピュータは、最近になって、動画をかなり簡便に扱えるようになった。そして、ネットワークも高速になってきて、動画のやりとりも自由にできるという 時代になってきた。動画は時間情報を正確に伝えることができるメディアである。まさに、スポーツの技術指導の道具として、コンピュータが利用できる時代に なったのである。そして、スポーツ情報は、この動画をいかに駆使するかというところが、重要なポイントとなる。しかし、まだ残された問題もある。

  コンピュータで映像を扱うために、いろいろな動画のフォーマットの規格化がおこなわれている。しかし、現在までの規格は映画などをみることをベースにし ているので、スポーツの指導に最適とはいえない問題がある。ときどき、ネットの映像をみると、カクカクとコマが飛ぶようなことがある、あの現象である。ス ポーツの場合、画面のきめ細かさよりは、時間情報が正確に伝わることが重要になる。スポーツ映像に関して、より正確な時間軸をもったフォーマットについて の検討が必要である。

  また、映像は、そのシーンに対して、いろいろな情報をもっている。その情報を、共通化したフォーマットで記述できるようにすることも情報の共有化のために重要である。そうすれば、映像情報が流通し、検索が可能になる。

  例えば、昨年のJリーグの公式戦での誰々の左からのシュートの映像が欲しいといえば、即座にその映像が集まるような仕組みである。今までも、スポーツ競 技団体から研究者のレベルまで、膨大な数の映像が記録されている。映像は、コンピュータ上に記録されるようになってきたが、それを検索するシステムがなけ れば、探すことができない。検索のためのどのような情報が必要か、あるシーンの情報をどうやってあらわすかということは、スポーツ情報で考えていかなくて はいけない問題である。それが出来て、はじめて検索ができるスポーツ情報になる。

  また、単なる撮影した映像に付加する情報は、シーン情報だけでなく、いろいろな計測データを付加することができる。それによって、より映像による利用の 効果を高めることも可能である。例えば、測定した力のデータも、数値より、その映像と同期させてベクトルで表示すれば、多くの情報をわかりやすく表示して 使うことができる。そういう意味で、映像のインターフェイスは、重要である。

  そして、そのような映像は、結局、人間の目に触れて理解されてはじめて役にたつ。その時、どういう情報をどのように示すかという、インターフェイスが重 要である。それは、ちょうどある運動をコーチングする時、情報をいかに選手に伝えるかというコーチのノウハウが重要であるのと同じことである。

  マルチメディアを利用し、選手にやさしいインターフェイスというものを、スポーツ情報の立場から、開発する必要がある。

  このように、映像の使い方1つとってもいろいろな課題が山積みしている。これを、1つずつ解決していくことで、スポーツ情報における映像というものが、役立つものになっていくと思う。

※本文は「月刊国立競技場」平成13年10月号に掲載されたものを転載しました。

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