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学校の管理下では、運動中はもちろん通常の授業中であっても、今までに既往歴がない児童生徒が突然、心室細動を発症し心肺停止に至るケースがあります。今回は、教職員たちの的確な判断と迅速な蘇生措置により一命を取り留めた高等学校での事例と、この災害を踏まえた新たな取組についてご紹介します。 |
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事 例
高等学校 3年生 男子
【災害発生状況】
体育の授業中にグラウンドで軽く走った後、大縄跳びを30回ほど跳んだ後に意識を失い倒れた。
【措置状況】
近くにいた教員がただちに心停止を確認、心肺蘇生を実施し、グラウンドにいた他の教員が救急車を要請し、AEDを持参して戻ってきた。AEDの1回目の作動後も胸骨圧迫を続け、その後2回目の作動を試みたが、回復したため作動はなく、被災生徒の呼吸や脈拍が戻ったことを確認した。その後、救急車からドクターヘリに引き継ぎ、病院に搬送された。
【その後の経過】
今回、被災生徒が倒れてから、約3分でAEDを作動させるという迅速さが生徒の命を救った。被災生徒は2ヶ月間入院したが、通常の学校生活を送れるようになり、3月に無事卒業した。 |
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この事例については、災害共済給付請求に係る実地調査を行い、災害発生状況の再確認と事故後の再発防止に向けた取組などについても調査しました。実地調査での聞き取り内容をご紹介します。 |
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災害発生後の取組組
〇 今回の災害を受けて、1年時に実施している心電図検査の結果で既往症があるかないか全生徒分のデータを確認した。
〇 発生時、混乱した中で全教職員が対応していたので、教職員による当日の行動を振り返ってもらうため、反省点や改善点等を
用紙にそれぞれ記載してもらい、改善することがないか情報を共有した。
〇 12月末の職員校内研修会でDVD「その時あなたは」を視聴した。 |
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研修会でのDVD視聴の様子 |
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熱心に視聴する先生方 |
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この職員研修後、取材にうかがいました。 |
先生方に聞いてみました
センター
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本災害後に教職員に当日の行動を振り返ってもらい、どのような
反省点や改善点がありましたか。 |
先生 |
混乱した中で、教職員が大声で内容を叫ぶことにより情報を伝達し、各教職員がなすべき事を判断して行動していたことが分かった。
改善点として、現場にいた教職員の間でAED、救急車、管理職への報告の3点の役割分担ができていると良いと考える。
被災生徒氏名、状況、現在の対応を管理職に報告する教職員がいると良かった。
しかし、何より人命が第一のため、今回のような緊急の場合は、校長が現場の対応、教頭が情報収集・全体指示など、どんな場合でも対応できるように体制を整えておくことが管理職の業務と考える。 |
センター |
DVDを校内研修会で視聴することになった経緯をお聞かせください。 |
先生 |
日本スポーツ振興センターに医療費の請求をした際にDVD資料の存在を知り、当時を検証するために校内研修で取り上げた。 |
センター |
本災害前はDVDを視聴してはいなかったそうですが、視聴後の感想をお聞かせ願います。 |
先生 |
・ 生徒が倒れ教職員が対応した状況が、DVDの状況と同じであり、混乱した中、それぞれの教職員が状況を
判断し、対応してくれたことに改めて感謝した。また、5月に1年生がAED等の救命救急講習を実施しており、
今後も継続することにした。
・ リアルに表現されていて、心肺蘇生をするイメージがしやすかった。普段から講習を行うことの重要性を
感じた。
・ 死戦期呼吸は、知らない人が多いと思うので良かったと思う。今後も学校関係者が見るべきDVDだと思う。 |
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取材を終えて
今回の災害は、周りにいた教職員たちの迅速な対応により生徒の命が救われました。類似の事故は、学校の管理下のいつどこで起きてしまうか分かりません。『その時あなたは』のDVDは、そういった状況に遭遇した際の的確な対処方法が紹介されています。皆さんの学校でも、今回紹介した学校のように教職員研修会等でDVDの視聴をしていただければ幸いです。 |
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※ DVD『その時あなたは』は、小学校・中学校・高等学校に配布済みです。 |
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『その時あなたは』は、センターHPの学校安全Webでも視聴することができますので、ぜひ一度ご覧ください。
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左の紫のバナーをクリックすると、「映像資料(DVD)」のページにとびます。 |
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事例紹介 介 |
心疾患が原因でICDの植込み術を施した平成27年度障害見舞金の給付事例を、学校安全Webの学校事故事例検索データベースより抜粋して紹介させていただきます。 |
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左の青いバナーをクリックすると、「学校事故事例検索データベース」のページにとびます。 |
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事例 1 中3 男子 体育(保健体育) |
3時限の体育の授業中、校庭で1,500m走のタイム測定を行っていた。トラックを1,500m走り終えゴールした後に、トラックを半周歩いた所で意識を失い倒れた。救急車を要請し、AEDを作動させた。3度目の作動で自発呼吸を再開し、救急搬送後治療を行い、ICDの植込みを行った。 |
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事例 2 高1 男子 体育(保健体育) |
水泳の授業で、アップでゆっくり75m泳いだ後、プール内で立って教諭の説明を聞いていたときに、全身硬直を起こした。教諭が引き上げた後も、全身硬直が続いていた。次第に硬直が解けてきたが、自発呼吸はなく、脈拍もなくなった。教諭が心肺蘇生を実施、担架でプール場外へ運びAEDを装着し、1回電気ショックを施した。その後、病院で治療を受けICDの植込み手術を受けた。 |
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事例 3 高2 男子 学校行事 |
海外にあるホテルで夕食を食べているときに、椅子(いす)に座っていたところ、突然昏倒し、じゅうたんが敷かれた床に大の字に転倒した。その時点で心肺停止状態だった。息を吹き返してはまた心臓が停止し、蘇生で再開するなどが15分~20分続いた。その後、入院し精密検査にてICD植込み手術を受けた。 |
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学校の管理下の中で、どのような状況でどのような事故が発生しているのかを知ることで、同様の事故を防ぐことができる可能性が高くなります。
他にも色々な事例を検索することできますので、学校事故事例検索データベースをぜひご活用ください。 |
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