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芝生の話 「なぜに国立競技場の芝生は美しいのか? 
~グラウンドキーパー汗と涙の奮闘記~」

第7回 「グラウンドキーパーと頼れる仲間達」

 前回は「大自然の小さな助っ人」と題して、ムクドリの活躍についてお話しました。グラウンドキーパーはムクドリが現れることによって、芝生に害を与える虫が発生していることを知り、早期に対処することができるというお話でした。
 さて今回は、芝生を管理するグラウンドキーパーの手となり足となる大事な大事な機械や道具についてご紹介します。どんな機械や道具が活躍し、どんな効果をもたらすのか、その用途と活躍をお話したいと思います。題して「グラウンドキーパーと頼れる仲間達」です。それでは早速ご紹介しましょう。

 

芝刈機

芝刈機は、芝生を管理する上で欠かせない機械です。芝刈機の状態の良し悪しで芝生の健康状態が左右されます。
切れ味が悪いと「刈る」というより「ちぎれ」てしまうので、葉先がささくれたようになりグラウンド表面が白っぽく見えてしまいます。もちろん伸びも悪くなり芝生全体に悪影響がでてしまいます。健康で美しい芝生を育てるためには、定期的に刃を研磨し、かみ合わせを調整することが大切です。

芝刈機にはもう一つ重要な役割があります。みなさんはサッカーやラグビーの試合でグラウンドにきれいなしま模様が描かれているのを見たことがあると思います。あの模様はどうやってできるのかわかりますか?
あの模様は芝刈機によって描かれるのです。芝刈機は芝生を刈るために、グラウンドの上を往復します。その際、芝刈機の重さで芝生が進行方向に倒れます。往復すると「行き」と「帰り」で芝生の倒れる方向が逆になるので、きれいなしま模様が描かれるのです。これを「順目」と「逆目」といいます。

  芝刈り機には「刈る」役割と演出のための「模様付け」という二つの役割があるのです。
芝刈りの写真
<芝刈りの様子>
ゼブラ模様の写真
<ゼブラ模様>

 

肥料散布機

肥料散布機は、2種類あります。一つは粒状肥料を散布する「手押し肥料散布器」、もう一つは液体肥料を散布する「乗用動力噴霧機」です。「手押し肥料散布器」はバケツにタイヤがついたようなシンプルな器械です。バケツに肥料を入れ歩きだすとバケツの下の円盤が回転し、円盤に落ちた肥料をその遠心力で散布します。グラウンド一面歩くので、健康には最適です!。しかし、目測で散布するので、熟練していないと肥料が落ちたところと、落ちていないところでムラが出てしまいます。

「乗用動力噴霧機」は500リットルのタンクと3.8m幅の噴射ノズルを有し、その姿は巨大な緑色のてんとう虫!グラウンドに3.8m幅でたこ糸を張りそれを目安に走ります。手押しの散布機よりムラになることが少なく、乗用なので楽チンです。

ここでちょっと肥料豆知識!粒状の肥料は、春から秋にかけて散布します。春から秋は芝生が元気よく育つ時期で、肥料をあげるとあっという間に吸収してしまいます。そこで一気に吸収しないように少しずつ栄養分が溶ける粒状の肥料を散布します。

液体の肥料は、生育が鈍る冬や元気がないときに散布します。芝生は厳寒期や元気のないときは活発に活動しません。肥料を吸収する力も鈍ってしまいます。そこで芝生が吸収しやすくて、即効性のある液体肥料を散布するのです。
手押し肥料散布器の写真
<手押し肥料散布器>
乗用動力噴霧機の写真
<乗用動力噴霧機>

 

スプリンクラー

国立競技場にスプリンクラーは4基あります。「レインガン」と呼ばれるシルバーに輝くスプリンクラーです。

4基でグラウンド全面をカバーできるほど飛距離があります。太陽がさんさんと照る日に散水すると、放物線を描きながら落ちる水のカーテンの中に虹が姿を現します。その美しさと言ったら言葉では表現できません。ただし・・・冬は寒くて、寒くて、手はかじかむし、鼻水は出るしでもうたまったもんじゃありません。芝生の表面に落ちるそばから凍ってしまうような寒いときもあります。それでも冬は乾燥しやすいので、散水は欠かせない大切な作業です。
散水の様子の写真
<散水の様子>

 

エアレーター

エアレーターは、1年に2、3回しか登場しませんが、グラウンドコンディションを維持する上で重要な役割を果たしています。
その役割とは、床土の通気をよくしたり、硬くなったグラウンドを柔らかくしたりすることです。エアレーターなんてはじめて聞く方が多いと思いますが、一体、どんな仕事をするのでしょうか?下の写真をご覧ください。

 

エアレーターの写真 穴を開けるタイン部分の写真 作業後の芝生表面の写真
<エアレーター> <穴を開けるタイン部分> <作業後の芝生表面>

 

写真でわかるとおり、グラウンドに穴をあける機械です。グラウンド全面この作業を行います。抜き取られたものを「コア」と呼びます。このコアを回収した後、穴の中に砂をすき込みます。こうして新しい砂を入れることによって土壌環境を改善することができます。

 

バーチカルモア

バーチカルモアは、芝生の表面をひっかく機械です。芝生の表面をひっかくなんて芝生をいじめてるみたいですよね。
でもこれが芝生のためになるんです。芝生が元気に育つとだんだん密度が濃くなり、詰まり過ぎてしまうことがあります。
それを解消するために芝生面を少しだけひっかいてすいてあげることにより、芝生はさらに伸びようとして活発になります。活発になることによって、新しい茎や葉が伸びて活性化することができるのです。しかしこの作業は、時期やタイミングを誤るとダメージになってしまうので、芝生の状態をよく把握して実施することが大切です。

 

バーチカルモアの写真 バーチカルユニットの写真 処理後   処理前の写真
<バーチカルモア> <バーチカルユニット> <処理後>   <処理前>

 

高圧液剤インジェクター

高圧液剤インジェクターは、土壌に直接薬剤を注入する機械です。土壌に潜んでいる害虫を退治するのに効果的です。
300リットルのタンクに水と薬剤を入れ、2本のアームから薬剤を噴射します。ただ、走行スピードが遅いので、グラウンド1面を終了するのに16時間程度かかります。
高圧液剤インジェクターの写真
<高圧液剤インジェクター>

 

六角リペアツール

この六角リペアツールは、芝生補修の達人です。芝生の損傷部分を何事もなかったかのようにきれいに補修する道具です。
正六角形(一辺9cm、深さ8cm)の「芝生型抜き器」です。まず補修したい部分をこのリペアツールで抜き取ります。同様に圃場から補修用の芝生を抜き取ります。同じ形で抜き取るので、ピッタリはまってどこを補修したのかわからないくらいきれいに仕上がります。抜き取られた芝生のその様は、ローソクを立てれば六角グリーンケーキ!
このツールの優れたところは、ブロックのようにいくつも組み合わせることができるので、隙間なくきれいに仕上がるところです。それからもう一つ、深さが8cmあり、根も土壌も一緒に移植することができるので、すぐにサッカーやラグビーの試合があってもめくれたりする心配がありません。ただし、すべて手作業なので、広面積の補修には向いていません。芝生を抜き取るのも、自分の体重を載せて抜き取るので重労働です。大変優れた道具ですが、この道具が登場するということは、それだけ芝生が損傷しているということなので、できればグラウンドキーパーにとっては、使用したくない道具です。

 

   
1こんな傷も…   2六角リペアツールで…   3損傷部分を抜き取って…

 

   
4グリーンケーキと入れ替えて…   5埋め戻せば…   6ほらこのとおり!

 

 いかがでしたか?国立競技場の芝生は、様々な機械や道具の活躍でいつも美しく保たれています。グラウンドキーパーはこうした機械や道具のメンテナンスも日々行っています。よい仕事をするためには常に道具もきちんと整備することが大切です。
 さて次回は、5月から実施される「国立霞ヶ丘競技場ラグビー場芝生張替工事特集!」。ラグビー場はなぜ芝生を張替えなければならなかったのか?実際にどんな方法で、どんな作業が行われるのか?
「新生ラグビー場」ができるまでをご紹介します。

 

 

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