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スポーツ施設の安全管理 ~第1回~

瀬戸口 祐剛
セノー株式会社 営業本部・企画部・企画課長
財団法人 日本体育施設協会 スポーツ施設研究所 専門委員

スポーツ施設の安全管理 タイトル

 これまでスポーツ施設の多くは、国体やインターハイをはじめとする大会や、企業やプロによる競技スポーツなど競技者中心の利用が多くみられました。しかし、近年は健康づくりに関する意識の高まりで、スポーツ活動を実践する人口が増加しており、その内容も多様化、高度化しています。特に公共スポーツ施設においては、その性格上、子どもからお年寄りまでの不特定多数の利用者が訪れることや、同時に心疾患などの危険因子を持っている利用者も考えられます。事故や緊急を要するアクシデントが起こる確率は以前に比べて格段に高くなっています。

 どのようなスポーツ活動においても本質的に危険を含んでいます。例えば、ラグビーのタックル、スクラムなど身体に激しい接触が許されるスポーツです。この危険な要素を前提として、スポーツ本来の特質と安全で楽しく活動するために、独自のルールづくりができています。

ラグビー競技規則2009序文において、

  1. 「ラグビーフットボール競技は、身体接触を伴うスポーツである。身体接触を伴うスポーツには本来危険が伴う。プレーヤーは、競技規則を遵守し、自分自身と他のプレーヤーの安全に留意することが特に重要である」
  2. 「プレーヤーは、責任を持って、ラグビーフットボールをプレーできるように身体的かつ技術的に準備し、競技規則を遵守し、安全に参加できるようにしなければならない」
  3. 「ラグビーフットボールの指導者は、プレーヤーが競技規則を遵守し安全にプレーできるよう責任を持って育成しなければならない」

とあります。特にラグビーはフェアプレーの精神が浸透しているスポーツとしてよく知られています。しかし、ルールで制限された技術であっても、不可避的事故は起こりますので、十分な補償体制をとるなど、施設管理者または指導者が競技者の安全を最大限に確保することは当然の責務であるといえます。

 また、スポーツに使用される設備、用器具の安全性もルールで規定されています。そもそもスポーツには、その特性に適合した競技性と安全性の両面から基準が規定されおり、これに準じて設備・用器具も製造されています。ただし設備・用器具の瑕疵による事故もあることは事実ですが、これらは事前の防止?日常点検や保守点検?により危険を回避することが可能です。

 このような、事故を未然に防止することが、皆様にスポーツ活動を安心で楽しめる施設としての役割であると考えます。もちろん、スポーツ活動を行う人も自己責任の元で日々の活動を楽しんでいただくことはいうまでもありません。

 このようにスポーツ事故は、その防止、責任、救急医療や補償などとの関連から「事前↓活動中↓事後」にとらえることができます。スポーツ活動に関するリスクマネジメントの目的である、(1) 「事故防止回避、危険の縮小、安全の確保」、(2)「質の高い活動・サービスの提供」、(3)「被害者及び加害者の損害の補償」、(4)「訴訟に対する法的防御」を踏まえて、施設管理者側がどういう対策を講じているのかを事例をあげながらご紹介したいと思います。 (次号へ)

 

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