[陸上]千葉麻美選手

  • Mama Athletes Network (MAN) 第2回ワークショップ
  • 開催日:平成27年12月4日(金)
  • 場所:国立スポーツ科学センター2F 研修室A&B

[陸上]千葉麻美選手

Q. 競技を続けながらの妊娠・出産はイメージしていましたか

 日本ではまだ少ないですが、他国の陸上選手で妊娠・出産を経験し競技復帰する選手は多くいて、日常的に競技場や遠征先で子どもと一緒にいるママアスリートの姿を見かける機会も多く、自分なりにイメージができていて、20代のうちに出産し競技復帰したいと若い頃から考えていました。妊娠がわかった時は、出産しても競技に復帰したいと考えていたため、出産してからどのくらいの期間で競技に復帰できるのか、妊娠中のトレーニングはどうしたらよいのかを1番に考えました。

Q. 妊娠期のトレーニングはどのように計画しましたか

 どこに相談したらよいかわからず、運動するならどの程度の強度にするべきか産婦人科の先生に相談するところから始めました。先生にとってもアスリートの妊婦は初めてでしたが、心拍数160拍位までの運動であれば大丈夫とアドバイスをいただきました。アドバイスを基に所属している陸上部監督と相談し、心拍数が160拍を超えない程度の運動を考え、トレーニング時は常にハートレートモニターをつけるように心がけて行いました。

Q. 妊娠期のトレーニングはいつ頃から始めましたか

 初めての妊娠で不安もあったため、安定期に入るまでは軽い負荷のチューブトレーニング程度を行い、本格的なトレーニングは安定期に入る妊娠5ヶ月位から出産一週間前まで継続して行いました。毎日、自分の体調を細かく監督に伝え、その日の体調に合わせたメニューを行っていましたが、時にはウォーミングアップのジョグで心拍数が160拍を超えてしまう日もあり、体調の変動に合わせて臨機応変に対応することもありました。妊娠後期に入ると、おなかが大きくて走ること自体が困難になってきたため、水中トレーニングに切り替えるなど工夫してトレーニングしました。

Q. 出産後のトレーニングで身体の変化を感じる出来事はありましたか

 出産により骨盤底筋がすごく緩んでしまい、短距離特有の動きでもある一瞬でバンっと力を入れるような瞬発的な動作ができなくなってしまいました。出産後10ヶ月ほどでロンドンオリンピックがあった為、早く復帰したいとの思いがどうしても強く、細かい部分よりも走りのトレーニングを優先してしまい、自分の感覚として良くなってきたと感じるまでに2年ほどかかってしまいました。今考えると、産後すぐに細かい部分の骨盤底筋などコアの部分からトレーニングしていれば、復帰までの期間をもう少し縮められたのかなと思います。

Q. 出産後にトレーニングを始めて何かトラブルはありませんでしたか

 出産後1ヶ月は産休で、オリンピック最終選考が2012年6月の日本選手権だった為、実質7ヶ月ほどのトレーニングで結果を出さなければならない状況でした。選考会まで日にちが少なく焦ってトレーニングしてしまい、普段なら敏感に感じるところを見逃しオーバートレーニング気味になり、選考会中に怪我をしてしまいました。妊娠前は丈夫であまり怪我する事なく過ごしていましたが、出産後に初めてハムストリングの肉離れを起こしてしまいました。初めての子育てとトレーニングの両立、最終選考の期限が迫り余裕がなかったのだなと怪我をして初めて気づき、自分の身体に敏感になれていなかったと反省しました。

Q. ロンドンオリンピック選考会後、気持ちの変化はありましたか

 残念ながらロンドンオリンピックを逃してしまいましたが、1番はオリンピック出場を目指して復帰したため、引退は全く考えませんでした。子どもを産んでから、オリンピックで走っている姿を子どもに見せたいとの思いが強くなり、もう1度オリンピックに出たいという気持ちが出産する前よりも更に強くなっているように感じます。現役を辞めたいという気持ちよりも現役を続けたいとの思いがより強くなっています。

Q. 仕事・育児・トレーニングの3つをどのように両立していますか

一日のスケジュール例

 上記は一日のスケジュールです。実家のすぐ近くに住んでいるため、母の助けが本当に大きいです。母が私の家に来てくれて子どもを幼稚園に送り、幼稚園が終わる13:30頃に迎えに行ってくれています。その後、自分が帰宅する18時頃までずっと子どもの面倒をみてくれているため、家族の支え無しでこのスケジュールで動くのは本当に難しいと感じています。トレーニングは、他のチームメイトより若干短くなる為、集中して短時間で終わらせるように工夫して時間を使うようになりました。遠征時はほとんど実家に預けて行くため、母にみてもらえるのはすごく安心するし、気軽にすぐ連絡がとれることも大きな利点で、多少の無理もお願いできるので競技の中ではとても助かっています。

Q. 遠征先(国内・海外)に子どもを連れて行きたいですか

 合宿中は午前・午後とトレーニングがあり、夜は自分の身体のケアなどもある為、逆に子どもと接する時間が少なくなってしまうことも考えられます。連れて行きたいなという思いはありますが、普段のトレーニングが若干短くなっているため、合宿でその分を補いたいとの思いもあります。現時点では、子どもにはかわいそうですがなかなか連れて行く事が難しいと感じています。

Q.経験者のお話を聞く機会はありましたか

 短距離で出産し復帰している選手が身近にいないため、誰に相談したらよいかわからなく、出産後の身体にどのくらいのダメージがあるのか予想がつかなく未知でした。産後の身体がどのくらいの期間で戻ってくるのか等、相談できる場所がなく本当に手探りだった為、もしも他の人の体験を聞ける機会があったら違う形で復帰ができたのかなと思いました。

Q. 出産後の体型の変化に伴い、新たに取り入れたことはありましたか

 出産後は出産前の走りに戻したいと思い、色々なトレーニングや走り方をしたのですが、出産前と全く同じ体型に戻すのは難しいと感じ、今の身体で新しい走りを見つけて出産前の競技レベルに近づけることを目標としました。新たな発見も多く、色々なチャレンジができるため出産前よりも新しい気持ちで競技が楽しめるようになりました。

Q. 今後、現役アスリートが競技復帰を目指して妊娠・出産をする中で、どのようなサポートが必要だと思いますか。

 私の場合は家族が近くにいて、サポートしてくれる環境にすごく恵まれていたなと感じます。1番は子どもを見ていてくれる環境が整っていると練習にも集中できますし、選手としてはありがたいと思います。近くに両親が住んでいないような環境だと練習時や遠征時が大変かなと思います。選手はだいたい午前も午後もトレーニングを行っているため、一日中子どもをみていてくれるような方がいないと難しいと感じます。

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