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平成27年度 妊娠期、産前・産後期、子育て期におけるトレーニングサポートプログラム

<各プログラムの概要>
1.調査・アンケート
2.妊娠期等トレーニングサポートプログラム
3.子育て期におけるトレーニングサポートプログラム

調査・アンケート

アンケート調査

実施内容

妊娠期や産後期のトレーニングに対する需要や、妊娠・出産後の競技復帰の希望を知るために、JOCオリンピック強化指定女性アスリート及び各NFの強化指定女性アスリートのうち、18歳以上の女性アスリート(※18~22歳の場合は社会人もしくは既婚者である女性アスリート)を対象に質問紙によるアンケート調査を実施しました。

アンケート調査の内容

・妊娠期及び産後期に参加したいトレーニングプログラム内容
(妊娠・出産後に現役を続けると想定したうえで回答いただきました。また、トレーニングの安全管理は最善を尽くして実施される場合をとして回答をいただいております。)
・産後の現役続行の意思

結果

本調査の結果に関しましては、同委託事業・同プロジェクト『女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究・実態に即した女性アスリート支援のための調査研究』の報告書P.17をご覧ください。

事例の調査

実施内容

出産を経験した女性アスリートが妊娠期、産前・産後期に実施していたトレーニング内容、身体の変化、必要性を感じたサポート内容等の情報を収集するために調査を実施しました。
国内外の出産を経験した女性アスリート/審判員及び妊娠期、産前・産後期におけるトレーニングを指導したことのある競技スタッフを対象に、調査(インタビュー形式による聞き取り形式及び、質問紙による筆記形式のどちらかもしくは両方)を行いました。

調査内容

・妊娠前・中・後のトレーニング実施内容、頻度、強度等
・出産時の状況
・妊娠中・出産後の身体状態
・必要だと思われる周囲のサポート
・禁忌事項や留意点、他

結果

アスリート5名、トレーナー2名、合計7名の方にご協力いただきました。
平成28年度に、集めた事例調査内容をまとめて事例調査集を作成する予定です。

得られた成果

数少ない妊娠・出産後に競技復帰をした女性アスリートから貴重な体験談を伺うことができました。出産後の競技復帰が明確であったアスリートの、妊娠期及び産後期のお話しを聞けたことは大変貴重であり、大きな成果でした。

今後の課題

出産後に競技を復帰した選手の事例をさらに集めるとともに、いかにトレーニングプログラム作成に役立つ情報を精査して得られるかが今後の課題となります。出産後に競技復帰するためには、母体と胎児の健康状態や周囲の環境、競技特性等の様々な要素が関係してきます。現在の事例調査数だけでは、妊娠期等のトレーニングサポートに反映する事は難しいです。また、得られた情報を必要に応じてアスリートやトレーニングの専門家に発信して情報交換・共有していくことも今後の課題となります。

妊娠期等トレーニングサポートプログラム

実施内容

出産後、競技に復帰し、国際大会を目指す女性アスリートのうち、NFから推薦のあった支援対象者とし、トレーニング分野におけるサポートを実施しました。支援対象者は3名であり、概要は以下のとおりです。

[支援対象者1]支援内容:トレーニング サポート開始時期:産後6か月(平成26年度より継続)
平成26年度から継続して、平均週3~4回のペースでトレーニングサポートを実施しました。そのうち週2回はウエイトトレーニング、残りの1~2回は持久力トレーニングを中心にプログラムを組み立てました。
ウエイトトレーニングに関しては、スクワットやデッドリフト、懸垂、プレス等のベーシックな多関節エクササイズを中心に、全身バランス良く鍛えるプログラムを作成し、指導しました。
持久力トレーニングに関しては、着地衝撃が大きいと考えられるラン系トレーニングは避け、着地衝撃を最小限にしながら代謝系に刺激を与えるようにエアロバイクやロウイングマシンを中心にプログラムを計画しました。

[支援対象者2]支援内容:トレーニング、栄養、心理 サポート開始時期:妊娠34週
【トレーニング】
◇妊娠期
妊娠34週目からトレーニングサポートを開始しましたが、体調が芳しくないことやスケジュールが原因となりトレーニングを実施できませでした。そのため、出産後の早期競技復帰を目指してトレーニングを計画しました。

◇産後期
産後2ヵ月より2週間に1回のペースでトレーニングサポートを実施しました。また産前・産後の身体の経時的変化を確認するためと、トレーニングの成果を確認するために形態測定・姿勢チェックを実施しました。
形態計測及び姿勢チェックは妊娠34週目・産後2か月目・産後5か月目の計3回測定しました。形態測定は三次元人体計測システム:Body Line Scannerを用いて実施しました。姿勢チェックでは、立位姿勢、スクワット時姿勢等を横・上・前後からカメラで撮影しました。

当該アスリートの産後の身体状況が芳しくなく、出産後すぐにトレーニングや測定を実施できなかったため、産直後~2ヵ月間は自宅療養でした。その後、骨盤底筋群や腹筋群の意識作りから始め、徐々に各関節の可動域を改善するようなエクササイズを実施しました。また現役の頃から+産後期特有の腰、膝、肩周囲の痛みがあったため、多関節よりも単関節エクササイズを中心として全身にバランスよく刺激を入れられるようにプログラムを組み立てました。
産後2ヵ月~5か月までトレーニングを実施した結果、プログラム内容や強度を漸進することができました。しかしながら、低頻度のサポートだったために産後の一般的な身体の戻りなのか、トレーニングを実施したことでの変化なのかは明らかではありませんでした。

【心理】
当該アスリートに対して妊娠期にヒアリングを実施し、①心理サポートに希望すること、②現在抱えている不安や問題、③産後の子育てや競技復帰に対する気持ち等の確認をしました。産後期においてはサポート実施に至りませんでしたが、産後3か月に産後うつ病のスクリーニングとしてエジンバラ産後うつ病自己評価票を実施しました。

【栄養】
当該アスリートに対して妊娠期から産後期に栄養サポートを実施しました。妊娠期においては妊娠中の栄養・食事摂取についてアドバイスを行いました。産後期は競技復帰への目標スケジュールを確認しながら、身体組成をモニタリングし、栄養サポートを実施しました。授乳期の栄養・食事や調理と授乳、離乳について等のアドバイスや、アスリート専用レストランでの食事選択の指導も行いました。産後期は競技復帰へ向け、子どもの栄養管理も含めた栄養サポートが重要になります。

[支援対象者3]支援内容:トレーニング サポート開始時期:産後2か月
産後2か月から2回トレーニングサポートを実施しました。産後期の身体であること、トレーニング経験が浅いこと、出産前から怪我をしていることを考慮してプログラムを組み立てました。股関節周囲の動きづくり、骨盤底筋群・腹筋群の意識づくりを行い、基本的なエクササイズの導入・フォーム習得を目的としたエクササイズを実施しました。
当該アスリートは2回目の帝王切開だったためか、著しく腹部の筋力が低下していました。自身も腹部に全く力が入らなく、起き上がることができないと自覚していました。
腹部の筋力低下以外では産後期特有のトラブルはなく、積極的にトレーニングを実施できました。

得られた成果

平成26年度では実施できなかった、出産後間もないアスリートのトレーニングサポートを実施できたことは大きな成果となります。分娩方法や個体差等によって、産後期の身体状態は非常に個人差が大きいです。そのような中、産後2ヵ月の年齢・競技・出産時の状況等が全く異なるアスリート2名を短期間であってもサポートできたことは、今後のトレーニングサポートに生かせる良い事例となりました。

今後の課題

妊娠期等のトレーニング指導に関する事例や情報を蓄積し続け、得た事例をJISS外とも共有していくことが今後の課題となると考えます。妊娠期は胎児の発育・発達はもちろん、母体の身体状況は他の妊婦アスリートと比較することは難しいです。競技特性、既往、トレーニング歴等も含めると、さらに比較することは難しくなります。しかし、他の妊婦アスリートがどの様なトレーニングを実施することができたのか、できなかったのかを知ることができれば、妊娠期等のトレーニング指導において選択肢の幅が広がるのではないかと考えます。

子育て期におけるトレーニングサポートプログラム

目的

子育て期トレーニングサポートプログラム(以下「育児サポート」という。)は、子育てを行いながらトップアスリートとして競技を継続できるよう、選手の競技環境を整備することを目的としています。
休日練習、大会、合宿での遠征等では、普段の保育園で対応できない場合が多く、また合宿会場や大会会場でも、託児室の設置といった施設環境が整っていないといった現状があり、このような課題解決へのアプローチとして、JISSでは育児サポートにて育児にかかる経費の一部を負担することとしました。

実施概要

(1)育児サポート支援対象者
平成27度は支援対象者を6名とし、うち5名に対し育児サポートを実施しました。支援対象者は以下の表のとおりです。

支援対象者
実施した大会等
子どもの年齢
(2016.3.31現在)
6名
夏季:4名 冬季:2名
5か月~6歳

(2)育児サポート対象経費
■育児サポート協力者(以下「協力者」という。)に育児サポートを依頼する。
■一時保育やシッター派遣サービスといった民間または公的なサービスを利用する。

と育児サポートの形態を大きく2つに分類し、育児サポート対象となる経費を整理しています。
また、経費の対象を定める際は、長期遠征や休日練習、競技大会といった、普段の保育園などでは対応できないような、アスリート特有の状況下で発生する経費であることを基準とし、普段通園する保育園の経費や、休暇時に協力者に育児サポートを依頼する場合の謝金等は対象外としています。

※詳しくは、以下の資料をご覧ください。
子育て期トレーニングサポートの実施手順について PDF Excel

(3)育児サポート事例
平成27年度に実施した育児サポートの事例については以下の表のとおりとなります。
なお、協力者については支援対象者の推薦をもとに決定します。平成27年度は協力者の大半が支援対象者の知人でした。広いネットワークを有する支援対象者については、出場する大会会場近隣に居住する知人に協力を依頼するなどし、育児サポートを有効に活用していました。
形態
実施した大会等
協力者または
利用サービス
内容
支援対象者数
件数
協力者に依頼
国際大会、国内大会
親族
知人
協力者に帯同してもらい、現地にして育児サポートを実施する。
3名
4件
国際大会、国内大会
強化合宿、通常練習
知人
協力者宅にて育児サポートを行う。
2名
8件
国内大会
強化合宿、通常練習
親族
知人
支援対象者宅または支援対象者の実家にて育児サポートを行う。
2名
3件
国内大会
知人
大会会場近くに居住する協力者が大会会場にて育児サポートを行う。
1名
2件
民間や公的な
サービスを利用
国際大会
保育園の
一時保育
親族宅に子どもを預け、平日の日中は親族宅近隣の一時保育を利用する。
1名
10件
国内大会
知人
大会会場または宿泊先にシッターを派遣してもらう。
2名
2件
育児サポート総件数
29件

※「支援対象者数」はサポート実績のあった支援対象者5名のうち、該当する形態のサポートを実施した人数を示します。
※「件数」はサポートの延べ日数ではなく、支援対象者からの申請件数をもとにカウントしています。
(例:全日本選手権中の5日間、育児サポートを実施した場合は1件としてカウント)

得られた成果

(1)支援対象者からの評価及び競技成績
育児サポートの支援対象者は日本トップレベルの競技成績を残し、国際大会でも活躍しています。また、各支援対象者が平成27年度、最も優良な競技成績を出したほとんどの大会で育児サポートを実施しました。
支援対象者からは、「友人に(子どもを)預けやすくなった。」、「競技に集中できる。」といった評価を受けています。

(2)モデルケースの作成
平成25年度から合わせ、3年度に渡り育児サポートの実績を積み重ねるなかで、体制(支援対象者決定までの手続き、ヒアリング、対象経費の整理等)を整備し、モデルケースとしてNF等の外部団体へ提供、紹介できる形となりました。詳しくは以下の資料をご参考にしてください。

※詳しくは、以下の資料をご覧ください。
「女性特有の課題に対応した支援プログラム」実施マニュアル
子育て期トレーニングサポートの実施手順について
PDF Excel

今後の課題

(1)育児サポートの評価・検証
育児サポートの必要性について、NFや育児サポートを受けていない選手に理解してもらうためには、育児サポートの評価・検証が必要となります。しかし、現状としては、育児サポートの有無が、競技成績にどの程度貢献しているのか、客観的な評価が難しく、支援を受けている選手の、主観的な評価のみとなっています。今後は、育児サポート前後での練習時間の変化等、量的かつ効果的な評価方法を検討し、実施する必要があります。

(2)NF等への働きかけ
競技特性によっては、出産後も競技を続ける選手の多い、またこれから増えることが予想されるNFがあります。このようなNFについては主体的に、育児サポートのような支援や、大会会場での託児室の設置等を実施していただけたら、と考えています。今後どこから、どのような働きかけを行うか、検討していく必要があります。

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