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JISS国際スポーツ科学会議2004

 


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「JISS国際科学会議2004~挑戦への新しいカタチ~」を終えて

松尾 彰文(スポーツ科学研究部)



はじめに

懇親会でのGulbin(左)、浅見センター長(中央)とNewenham(右)
懇親会でのGulbin(左)、浅見センター長(中央)とNewenham(右)
 
 2004年は8月にアテネオリンピック大会を迎える。また、東京オリンピック大会の40周年でもあり、スポーツ界は熱くなってきている。このような状況 の中、国立スポーツ科学センター(JISS)では、平成16年2月5、6日の2日間にわたって「JISS国際スポーツ科学会議2004”挑戦への新しいカ タチ”」をJISS3階の研究体育館で開催した。

 会議では、JISSの中心的な研究課題である「高地・低酸素トレーニング」、「タレント発掘」と「トレーニングの新しいコンセプト」をテーマに、国内外 の専門家とJISSの研究者とで3題のシンポジウムが持たれた。また、ポスター発表では、委託研究を含めてJISSの研究成果と活動の報告など49題の発 表が行われた。

 2日ともJISS関係者を除いて150名前後の参加者があり、マスコミ関係の参加も多く盛況だった。1日目の夕方には懇親会があり、海外からの講演者を 囲んだり、参加者同士の歓談が持たれたりと、和やかな中にもスポーツと科学への熱い思いが語り合われた。以下にセッションごとの内容の概略を紹介する。

 

 


「高地・低酸素トレーニングの現在・未来」

「高地・低酸素トレーニング」のセッション風景
「高地・低酸素トレーニング」のセッション風景
 
 このセッションでの基調講演は、小林寛道氏(東京大学)によってシンポジウムの表題と同じタイトルで行われた。これまでの実践的研究の結果から、トレー ニングを行う標高の組み合わせ方が効果を大きく左右する要素であること、競技力向上だけではなく、生涯スポーツや肥満解消などにも応用が期待されているこ となどが報告された。

 続いてJISSの研究成果について川原貴、伊藤穣、岩原文彦(以上JISS)から、それぞれ、個人差、無酸素性能力への効果、競泳を含む実践的取り組み について報告し、その後、山本正嘉氏(鹿屋体育大学)が自転車競技、前嶋孝氏(専修大学)がスピードスケート競技での実践的研究について話題提供された。 個人差への標高とトレーニング強度の適切な対応や、常酸素環境と低酸素環境でのトレーニングと生活の組み合わせ、さらにはスタミナだけでなくパワーへの効 果など、低酸素環境の利用の可能性の広がりを感じさせる内容だった。

「我が国におけるタレント発掘システムの構築に向けて」

 このセッションは、オーストラリアのタレント発掘・育成プログラムのナショナルコーディネーターであるJason Gulbin氏(オーストラリアスポーツ研究所)の基調講演「オーストラリアにおけるタレントリサーチの現状」から始まった。スポーツに参加していない潜 在的競技者を発見または識別するタレント発掘、スポーツ参加者の中からタレントを見出すタレント選抜の考え方と方法が説明され、最も重要なのは見出された タレントを育成するコーチング環境だと述べた。また種目転向を含めて、このプログラムで世界レベルの競技者を数多く育成しているオーストラリアの現状が報 告された。

 続いて勝田隆氏(仙台大学)がJISSとJOCの連携で進めているタレント発掘プログラムのコンセプトについて、小松佐歳氏(福岡県立スポーツ科学情報 センター)がそのコンセプトを福岡でモデル事業として展開しようとしている計画について、阿江通良氏(筑波大学)はタレントの重要な要素であるカンとか動 きのコツを、一流の競技者や指導者はどうとらえているのかについて、高橋英幸(JISS)はタレント発掘・育成の日本の現状に関する調査結果と、遺伝子研 究の現状とその背景について、それぞれ報告した。いずれもが競技力の向上にとって「見つけ、育て、生かす」ことの重要性が再認識された内容だった。

「トレーニングの新しいコンセプト」

 このセッションではイングランドスポーツ研究所(EIS)の筋力・コンディショニングマネージャーであるTim Newenham氏が「競技力向上のた めのトレーニングの新しいコンセプト」と題する基調講演を行った。氏はイギリスで2002年からEISにて国際的な競技者に提供しているトレーニングサー ビスの内容を、一部にビデオを用いながら紹介した。競技者とコーチが中心的存在であり、彼らがよいと感じる方向でトレーニングを行うことが大切であるとい う発言が印象的だった。

 続いて、吉村豊氏(中央大学)が牽引したり負荷をかけたりするアシスト泳とレジスト泳による効果について、田村尚之(JISS)がJISSのトレーニン グ体育館で行っている競技者サポートのためのトレーニングシステムについて、野坂和則氏(横浜市立大学)がレジスタンストレーニングによって起こる筋肉痛 のメカニズムについて話題を提供した。

ポスターセッション

ポスター発表会場風景
ポスター発表会場風景
 
 ポスター発表では、JISSでの研究と各競技団体への委託研究の成果が発表された。コンディショニング、低酸素、メディカル、メンタル、タレント発掘& ジュニア、情報関連、フィットネス&スキル、栄養、トレーニングと分野別に区分けされたそれぞれのポスターの前で、自由な雰囲気の中で熱心な討論が行われ た。

おわりに

 JISSの科学会議はこれからも毎年開催される予定である。次回はアテネオリンピックの直後でもあり、JISSのこれまでの競技力向上へのサポート総括を報告できるよう取り組んでいきたい。


※本文は「月刊国立競技場」平成16年4月号に掲載されたものを転載しました。

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