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「アジアスポーツ科学会議2003」を終えて

アジアスポーツ科学会議2003
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「アジアスポーツ科学会議2003」を終えて

国立スポーツ科学センター
センター長 浅見 俊雄


 去る2月22日(土)、23日(日)の2日間、国立スポーツ科学センター(JISS)において「アジアスポーツ科学会議2003」が開催された。まずこの会議を開くに至った経緯と趣旨について紹介しておきたい。

アジアスポーツ科学会議写真1  この会議は、それぞれの国でJISSと同じような役割と機能を持っている機関である中国国家体育総局体育科学研究所(CNRISS)と韓国体育科学研究院 (KSSI)、そしてJISSとが共催して行うというユニークな会議で、今回が3回目に当たる。といっても最初の会のときはJISSはまだ設立されていな かったので、中韓の共催で2000年11月に北京で行われ、第2回の準備を進めていたKSSIから、JISSの設立を知って三者共催の提案があり、 JISSも参加してソウルで2001年5月に会議が持たれた。そして3回目は当然のことながら日本でとなったのであるが、2002年には釜山アジア大会の 直前に同大会組織委員会の主催でアジア科学会議が開催されることが分かっていたので、競合は避けてその年は見送り、プサンの科学会議の折には三者会談のみ が持たれた。

 その会談で、JISSから今回の会議の日程や内容が紹介され、また今後この会議を4年に1回のアジア大会科学会議を挟んで中・韓・日で順次開催するとい う案をJISSから提案して合意が得られた。したがってこれからは、2004年中国、2005年韓国、2006年カタール(アジア大会開催国)、2007 年日本という順序で会議が開催されることになっている。

 この会議の趣旨は、隣同士の国であり、スポーツでもよきライバルでしかもアジアのリーダーである3国で、同じような使命と目的を担って事業を展開してい る3研究機関を中心に、3国をはじめとするアジアや世界のスポーツ関係者が一堂に会して、科学研究やその現場での実践の成果についての発表や討論を通じて 最新の情報を交換し合うとともに、友好の輪を広げていこうというものである。そして得られた知見や情報をそれぞれに持ち帰って、機関としての事業展開や個 人としての研究やスポーツ実践に生かすことで、さらに切磋琢磨しながらスポーツ科学とスポーツ実践の質を高めて、スポーツの一層の振興、発展に貢献してい こうというものであると考えている。

 第1回のメインテーマは「新世紀のスポーツ科学」、第2回は「21世紀の国家スポーツ政策とスポーツ科学」というものであった。中韓の両研究所は対象と して生涯スポーツもカバーしているし、研究面でも人文、社会科学系も含まれている。その点JISSは国際競技力に特化しているし、自然科学系というか実験 科学系の研究とサポートが中心となっている組織である。こうしたことから、今回はJISSの特徴を生かしたテーマとして、「国際競技力向上を目指して-ス ポーツ科学の新たな挑戦」を選んだのであった。

アジアスポーツ科学会議写真2  1日目の第1セッションでは「各国の国際競技力向上方策―アテネそして北京へ向けて」をテーマに、英国から招待した連合王国スポーツ研究所(UKSI) のポール・ガスティン博士に英国の方策を話していただき、さらに日中韓がそれぞれの国の取り組みについて紹介して、最後に4人で討論するシンポジウム形式 をとった。このあとのポスター発表には、中国5、韓国2を含む36演題の申し込みがあり、残念ながら中国の2題はビザが間に合わずにキャンセルとなった が、ポスターの前で外国語を交えての活発な討論、意見の交換がなされた。ここではJISSで行った研究も9題発表されて、JISSの研究活動を世に問うよ い機会にもなった。

 2日目の第2セッションでは、「国際競技力向上への医・科学・情報からのトータルサポート」をテーマに、シドニーオリンピックで大きな成果を上げたオー ストラリア競泳チームのサポートの責任者だったオーストラリアスポーツ研究所(AIS)のブルース・メイソン博士にその活動内容を紹介いただき、次いで日 中韓の3研究所でこれまで行いかつアテネへ向けて続けていこうとしているサポートの実践例を、日本はシンクロ、中国はレスリングと競泳、韓国は全体のサ ポートシステムについて紹介しあって、さらに討論を行った。

 第3セッションでは「競技力向上へのスポーツ科学の新しいチャレンジ」のテーマで、先端的でかつ競技力向上にとっても重要な研究成果をあげている日中の 研究者と、アメリカからJISSに招聘研究員として滞在しているロバート・グレゴー博士にそれぞれの研究について講演していただいた。

 参会者は2日ともJISS関係者を含めて250人を超えるような盛況で、中韓の研究所からの招待者のほか、中国、韓国、シンガポール、マカオ、フィリッ ピン、インドネシアのアジア諸国、それに英、豪、米の講演者と、NOCの数でいえば日本を加えて10か国(地域)からの参加があり、国際色も豊かであっ た。

アジアスポーツ科学会議写真3  内容をすべて紹介することはできないが、英国の取り組みはJISSにとっても大変参考になった。中でもUKSIが中心となって地域の研究所や大学、トレー ニング拠点とネットワークを組んで、協力しながら現場でのニーズに応えた医・科学サポートなどのサービスを提供している仕組みは、JISSがこれから構築 していこうとしているシステムのよいモデルになるものだった。こうした取り組みが可能となったのは、宝くじを新に導入してスポーツへかなり潤沢に資金を投 下できるようになったという背景があるのだが、日本でもトトの成功がスポーツ振興にとって重要な意味を持っていることを改めて痛感した次第である。

 最後に、今回の会議開催にあたり、いろいろな形でご協力、ご援助をいただいた多くの方々に、心からの感謝を申し上げたい。

※本文は「月刊国立競技場」平成15年4月号に掲載されたものを転載しました。

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