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サポートのたね

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ここで蒔いた「たね」が、いつの日かスポーツの世界で花開くことを願っています。

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投稿者: サポートの たね
2017/03/08 17:47

スポーツ科学部研究員 松林 武生

リオデジャネイロ五輪の陸上競技、男子4×100mリレーにおいて、日本チームは見事に銀メダルを獲得しました。決勝に進出した8ヶ国のうち、100m 9秒台の記録を有する走者がいなかったのは日本とブラジルのみ。他の6ヶ国のなかでもジャマイカやアメリカは、4人の走者全員が9秒台の記録を有するチームでした。日本チームの4選手も、これまでで最も走力の高いメンバーであったことは確かですが、それでも9秒台の記録を有する選手は誰もいません。このように選手個人の走力においては不利な状況の中で、日本チームはなぜ銀メダルを獲得できたのでしょうか。

その秘密は「バトンパス」の技術にあります。4人の走者がバトンをつなぐとき、3回のバトンパスが行なわれます。これを効率的に行うことで、個人の走力では引き離されてしまう分のタイムを挽回し、メダルを獲得したのです。日本チームは、バトンパス技術を磨けばリレー種目での上位入賞が可能だと考え、この種目を長年重点的に強化してきました。効率的なバトンパスとは一体どういうものか、この秘密を探るために、国際大会における日本チームのバトンパスについて、科学サポート班による分析も重ねられました。蓄積されたデータから見えてきたのは、「バトンを受け取る際の走る速度が重要だ」ということでした。バトンパスを受ける際には、手を上げる必要があったり、パスを受け取れないリスクを考えてしまったりして、どうしても全力ではない走りになってしまいます。これを克服し、バトンパス中にも走る速度を高く保つことが、効率的なバトンパスのポイントだったのです。日本チームはバトンパスを受ける選手が走りやすいように「アンダーハンドパス」という手をあまり高く上げないパスの方法を採用するなど、工夫と試行錯誤を重ねてきました。

効果的なバトンパスのポイントが見えてきたとしても、これをすぐに行えた訳ではありません。日本チームは合宿の際にバトンパスの練習を繰り返し、その精度を高める努力を重ねました。科学サポート班も合宿に帯同し、バトンパスでの走者の速度等を分析することで、精度向上を共に目指しました。2016年リオ五輪の直前においても、代表選手決定後の7月国内合宿や、リオ入り直前の8月アメリカ合宿において、バトンパス練習の分析サポートを行いました。練習によって精度が高められたバトンパス技術は、リオ五輪での銀メダル獲得につながりました。

次の五輪、2020年東京大会へ向けた挑戦は既に始まっています。リオ五輪で樹立したリレー日本記録をさらに短縮するために必要なものは何か、科学サポート班による分析が現在進められています。日本チームのこれからの活躍に期待しましょう。

サポートのたね8-1 松林研究員
図 バトンパス中の走速度
バトンパスを受ける走者の速度が高まらないままパスを行うと、タイムのロスに繋がる(図上)
できるだけ全力で加速してバトンを受けることが、効率のよいバトンパスにつながる(図下)
(2017年3月10日掲載)

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