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サポートのたね

「サポートのたね」では、JISSで行っている研究の報告をわかりやすくコラムとして紹介します。
ここで蒔いた「たね」が、いつの日かスポーツの世界で花開くことを願っています。

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投稿者: サポートの たね
2016/11/04 17:49

スポーツ科学部契約研究員 松田 有司

競泳日本チームは、リオデジャネイロオリンピックにおいて金メダル2個を含む合計7つのメダルを獲得し、大いに活躍しました。競泳選手が泳いでいる姿をテレビで応援し、一喜一憂した方も多いことでしょう。皆さんがテレビで見たレース映像には、実は様々な科学的な情報、「測る」量が含まれています。JISSでは開所当初からレースをビデオカメラで撮影し、そのレース映像から競泳のレースを測ることを試み、測った結果を選手にフィードバックすることや、測った結果から競技力の向上に役立つ技術を探ってきました。 競泳は他の選手よりも100分の1秒でも早く、ゴールに到着した選手が勝利を手にします。レースでは、選手はスタート台から飛び込み、その後浮き上がって泳ぎだします。プールの端で折り返すためにターン動作を行わなくてはなりません。競泳は、速く泳げる選手が必ずしも最初にゴールするわけではなく、スタート、ターン、泳ぎの総タイムが短い選手がレースを制するのです。レースでは公式タイムが発表されますが、例えば100mを例に挙げると、折り返し地点の50mのタイムと、ゴールの100mタイムしか発表されません。この公式タイムだけでは、選手がスタートやターン区間に何秒要したのか?どんな泳ぎをしたのか?以前の自分と比べてタイムが短縮した要因は何か?といった疑問に対して正確な答えを得ることができません。これらの疑問に答えるためには、レースの情報を独自に取得して詳細な分析をすることが必要です。それがレース分析です。

サポートのたね7-1 松田研究員 競泳レースをテレビで見る時にコースロープの色に注目してください。50mプールでは、5mから10mおきにコースロープの色が変わっています(写真)。この色の変化を基準にして、泳者の頭部が通過するときのタイム情報をビデオから読み取ることで、通過タイムを計測することができます。例えばスタートから15mまでに所要するタイムはスタート局面と定義されています。そのタイムの良し悪しで、スタート技術が評価できます。同様に45m地点から壁にタッチして15m戻ってくるまでをターン技術の評価に使うこともできます。スタートとターンの間の泳ぎの局面では、平均スピード、ひとかきに要した時間、ひとかきで進んだ距離などを分析します。これらの情報を蓄積しておくことで、どんな戦略でレースに臨むか、そして戦略通りに泳げたかを確認できるのです。

科学的サポートでは、精確な数値を測定するということが重要ですが、いち早く選手にデータをフィードバックするということも重要な要素です。競泳のレース分析では、選手のレースが終了して10分もすれば選手のレース分析結果(表)を選手のもとに返すことができるようシステムが構築されています。フィードバックが早ければ、選手やコーチは、予選で泳いだレース展開をすぐに確認することができ、決勝に向けて戦略を立てることができます。

サポートのたね7-2 松田研究員
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JISSが開所した当初から実施されてきたレース分析ですが、これまでに分析したレース数は優に1万レースを超えました。現在の日本代表チームでは、レース分析の重要性が強く認識され、分析結果は選手やコーチにとって欠かすことのできない情報として定着しています。その陰には、データの精確性やフィードバックのスピードの向上など、「サポートの成長」がありました。選手の成長と共に、科学サポートも日々成長をしていかなければならないのです。「サポートの成長」により、レース映像からリアルタイムに分析が実施され、テレビ画面で選手の泳いでいる姿の傍らに分析結果が映し出される日も遠くないかもしれません。  (2016年11月10日掲載)

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