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サポートのたね

「サポートのたね」では、JISSで行っている研究の報告をわかりやすくコラムとして紹介します。
ここで蒔いた「たね」が、いつの日かスポーツの世界で花開くことを願っています。

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投稿者: サポートの たね
2016/09/29 15:47

スポーツ科学部先任研究員 窪 康之

JISSが開所してから15年が経ちました。はじめのうちは、JISSに何ができるのかアスリートやコーチの皆さんに上手く伝えることができず、ほんの数種目にしかサポートを受け入れていただくことはできませんでした。しかし、今では40種目以上の競技のアスリートが毎日のようにJISSのサポートを利用してくださっています。幸いなことに、多くの競技現場からJISSの科学的サポートが役に立っていると評価をいただいていますが、選手の皆さんがどんなに努力してもなかなかメダルに手が届かないように、サポートも常に成功するわけではありません。成功と失敗を繰り返す中で、どうすれば科学的サポートが役に立つのか、私たちは考え続けてきました。今夏のリオデジャネイロ大会が終わり、2018年の平昌、そして2020年の東京と、アスリートに対する期待が高まる中で、JISSには何ができるのか、アスリートを科学的にサポートするとはどういうことか、私たちは今一度考えなくてはなりません。
科学的…というと、何かとても正しい、誰も知らなかった真実が見つかるような、そしてそれに従えば飛躍的にアスリートの能力が向上するような印象を持たれる方が多いでしょう。しかし、科学的とは、そんなに大それたことを意味する言葉ではありません。科学的とは、「誰もが確かめることのできる情報に基づいて考えを述べる」という手順に従っているということです。同じ手順で色々な人が繰り返し確かめて、より正しい答えに近づこうとするのが科学ですから、科学的だからといって、新しくて役に立つ知識が次々と生み出されるわけではないのです。ただし、誰もが確かめることのできる情報というところが、アスリートをサポートするためのひとつのポイントになるとは言えるでしょう。
誰もが確かめることのできる情報とは、端的に言えば、「測った量」です。身長や体重、体脂肪率などの身体そのものに関するもの、筋力やパワーなどの身体の機能に関するもの、スピードや高さ、距離などの実際のパフォーマンスに関わるものです。これらの量を共通の道具や方法で測れれば、誰もが数字として扱うことができ、記録したり比べたりするのに非常に便利です。統計的に、あるいは生理学や力学の理論に基づいて量と量の関係を調べ、様々な現象の原因を明らかにすることもできます。本来、一流のアスリートが頭と身体で処理している情報は、アスリートとその周辺の訓練された人達にしか共有のできない、独特の感覚や言葉の領域のものです。私たちがアスリートの話を聞いてすぐに理解できるものではありません。しかし、難しいからといって遠巻きに見ているだけでは、彼らのパフォーマンスの秘密を残すことはできないので、私たちはその一部だけでも取り出して測るのです。測ることによって情報を残し、分析してメカニズムを理解するのです。こうして生み出された新しい身体の動かし方や身体を大きく強くするためのアイディアは、アスリートの体力や技術の一部分に影響を与えます。その結果、部分的にはよくなるかもしれないが、全体としてはどうなるかわからない。人間のパフォーマンスは複雑ですから、やってみなければわからないのです。しかし、上手くいっても上手くいかなくても科学的な手順を踏んでいる限り、その様子を論理的に検証することができ、次のステップが議論できる。それが科学の強みなのです。
サポートのたね6 窪先任研究員
これから、この「サポートのたね」では、JISSが行っている科学的サポートの情報を紹介していくことになりました。JISSのスタッフは、科学的に生み出したアイディアをもとにアスリートやコーチとどんな議論をしているのか、アスリートは、新しいチャレンジに勇気をもって臨むためにどうやって科学を利用しているのか、それぞれの種目のサポートを担当するスタッフから紹介してもらいます。どうか楽しみにしていてください。 (2016年10月7日掲載)

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