JISSのスタッフ、勤務経験者がJISSでの仕事を紹介します。

06 04

投稿者: ex- worker
2010/06/04 0:00

現職 日本女子体育大学体育学部運動科学科スポーツ科学専攻准教授
特定非営利活動法人日本スポーツ栄養研究会副会長
専門領域 スポーツ栄養学
最終学歴 日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修了
早稲田大学スポーツ科学研究科博士後期課程3年 在籍中

元 JISSスポーツ医学研究部契約研究員

JISSで働く前は何をしていたか
女子レスリング合宿(桜花道場)にて
JISS在籍中に、女子レスリング合宿(桜花道場)にて
選手には食品や料理の知識を実践的に学んでもらっている。

(右が田口)

 大学卒業後はスポーツ栄養の普及のための草の根活動を行 い、1992年のバルセロナオリンピックでは日本陸上競技連盟の支援コーチ(管理栄養士)として、オリンピック前の栄養サポートを実施しました。オリン ピック期間中は寝不足の毎日でしたが、栄養管理は選手のコンディション調整に大きな影響を及ぼすことを改めて実感できた貴重な体験でした。その後は実業団 長距離チームの専属管理栄養士となり、エリート選手を含む選手の栄養サポートを行いました。いろいろな種目や競技レベルにおける栄養サポートをするうち に、日々の疑問や現場での問題点を解決し自らのスキルをより高めたいと思い、日本女子体育大学大学院に入学しました。修了後は国立健康・栄養研究所の協力 研究員として「女性選手の基礎代謝量」に関する研究を推進する傍ら、管理栄養士として実業団チームの食事管理や栄養指導、日本体育協会や競技団体主催の指 導者養成講習会などでスポーツ栄養学の講師をするなど、スポーツ栄養の普及・啓蒙活動に邁進しました。

なぜJISSで働こうと思ったのか

私はオリンピックに公的立場(日本陸上競技 連盟支援コーチ)で帯同した日本初の管理栄養士です。当時、スポーツ現場で栄養摂取が重要との認識が少しずつ定着していたものの、栄養管理を行うことのメ リットを真に実感している指導者はまだあまり多くなかった時代でした。また、当時は健康食品の売り上げが著しく伸びている頃で、新しく開発されたサプリメ ントの使用をすることが最新のスポーツ栄養学のように勘違いをする指導者や選手もいました。そんな中、アメリカで開催された国際スポーツ栄養会議に出席 し、コロラドスプリングスにあるオリンピックトレーニングセンターも見学しました。アスリートを対象とした具体的な栄養摂取の基準が日本よりも明確である ことに驚きを感じ、アメリカの栄養士の活発な活動を垣間見て、「追いつきたい!」との想いを固めました。栄養摂取を行う際には目標とする栄養素の摂取基準 を満たせばよいというだけでなく、我が国独特の食文化をも踏まえた食事提供が求められます。そこで、知識は積極的に輸入しながら、食事管理は我が国ならで はのものを確立する必要があると考えました。また、日本ならではの栄養サポートシステムの確立も必要不可欠と思っていました。ちょうどその頃、日本にもス ポーツ科学センター建設の構想があることを耳にし、「自分のこれまでの経験を最大限に発揮して国際競技力向上に栄養面から貢献できる場所はここしかな い!!」と思い、競技力向上とスポーツ栄養の発展に貢献するためにJISSのスタッフになるという強い想いを胸に秘め、目標に向かって努力を続けました。

JISSでの業務の内容は?

 平成13年の10月に開所を控えたJISSの栄養部門の立 ち上げが最初のミッションでした。しかし、半年しか時間がないにもかかわらず、レストランと栄養指導室の場所が確保されているだけで、中身はまったくの空 洞でした。まずはレストランの立ち上げに着手しました。単なる食事提供の場ではなく、エリート選手にふさわしいメニューが提供できること、栄養教育ができ る場にすること、いろいろな種目の選手や指導者、サポートスタッフが交流できる場にすることを目標とし、給食委託業者の選定、献立作成とレシピの蓄積、独 自の食事管理システムの構築を行いました。提供する1品のポーションサイズや栄養表示、栄養チェックシステムの導入など、すべてがこれまでにないトップア スリートを対象としたオリジナリティーの高いものでした。
開所後の主な業務は、競技団体のニーズに合わせた栄養サポートの展開です。栄養サポートの希望はレスリング、シンクロ、体操、ウエイトリフティング、 ボートなど多くの競技団体から寄せられ、JISS栄養スタッフ、競技団体栄養スタッフ、地域の栄養スタッフなどが連携したサポート体制をつくることを目指 しました。さらにはドクター、トレーニング体育館スタッフ、リハビリテーション室スタッフ、心理サポートスタッフ、情報部など、多領域の専門スタッフと連 携した新しいサポート体制のありかたを模索しました。
しかし、開所時は栄養サポートに対する体制面での理解が必ずしも得られていたわけではありません。運営部などの関係者とのすり合わせや競技団体への働き かけも積極的に行わなくてはなりませんでした。そして、開所当初は私一人だった栄養指導室も、サポートと研究を行う組織的基盤の整備をすすめることにより 3年目には常勤管理栄養士3名と非常勤管理栄養士3名の合計6名にまで増員できました。
当時の任期は3年でしたので、スタッフや予算の確保に多大な労力を傾け、サポートを行い、寝る間も惜しんで精一杯仕事に没頭した毎日でした。

JISSの仕事で心に残っているもの

 JISS栄養部門にとってロールモデルとなったのは AIS(オーストラリアスポーツ研究所)の栄養部門です。そこで、浅見センター長(当時)とスポーツ科学研究部研究員数名と一緒にAISの視察に出かけま した。見聞きするすべてが刺激的でしたが、参考にしつつも我が国独自のものを作らなくてはならないという想いも新たにすることができました。日本の食生活 は大変健康的かつ豊かであり、食事管理のシステムについてはJISSの方がはるかに進んでいました。JISSレストランにおける食事管理システムは、世界 に誇れるものの一つと自負しています。しかし諸外国では栄養サポートの位置づけが我国よりも明確であり、諸外国の体制に追いつけるようにあちこちで栄養サ ポートの意義を訴え続けました。

AISレストランにて AIS視察
AISレストランにて AIS視察
サポートでは、レスリング協会からの依頼で栄養サポートを実施したことは大変貴重な経験でした。レスリングの減量後のリカバリーについて現場的な研究も 実施しました。特に女子レスリングのサポートで何度か桜花道場(新潟)に出かけたことは忘れられません。科学スタッフやトレーニング体育館スタッフと連携 してサポートにあたれたことにより、多少なりともそれまで全く医・科学サポートを受けた経験のなかった彼女たちの競技力向上のために貢献できたのではない かと思っています。
アテネオリンピック前にはアテネの食事事情 の視察に出かけました。スーパーや日本食レストランを回り衛生状態や食品の状況などについて調査しました。栄養・食事面での視察は我国で初めての試みだっ たため、その必要性を理解してもらうまで時間と労力を要しましたが、現在では国際総合競技大会の際にはJISS栄養部門のスタッフが調査に出かけることが 定着したようです。そのきっかけを作れたことはとてもよかったと思っています。また、帰国後はレストランにて「アテネフェア」が開催され、それが出発前の 選手や指導者の参考になったとすれば、これに勝る喜びはありません。
JISSでの仕事を通して得たもの.自分が成長したと考える面

 開所当時のJISSのスタッフは皆、測定技術や専門知識を 持ち、コミニュケーションスキルやプレゼンテーションスキルに優れ、何よりも競技力向上のために昼夜を惜しまず努力できる熱いスピリッツを持った人材ばか りが集まっていました。また、当時のセンター長やスポーツ医学研究部長はとても広い視野と公平な視点をお持ちであり、多くを学ばせていただきました。各領 域のスタッフとの出会いとディスカッションした時間は何よりの宝であり、彼らと連携サポートができたことは誇りと思っています。また、競技団体のスタッフ の方たちとの出会いも大変貴重なものでした。しかし、すべてが順調であったわけではありません。事務方にも栄養サポートの意義について理解を得られなけれ ば、事業としては成り立ちません。何度も正当性と必要性を訴え、根気強く根回しと働きかけを行いました。このようなJISSにおけるすべての経験が、「ス ポーツ栄養士」としての私と「一人の人間」としての私を大きく成長させてくれました。

JISSで働くことを希望する人に対するメッセージ

 JISSを利用する選手は世界の頂点を目指して日々のハー ドトレーニングに打ち込んでいます。したがって、そんな彼らをサポートするスタッフも、各領域において世界の頂点を目指す努力が必要不可欠と思います。し かし、レベルの高い原著論文を投稿できることよりも、人としての深みと誠意があり、競技力向上のための医科学サポートや現場的な研究への熱い想いが持ち続 けられる粘り強さと絶え間ない努力をし続けられることが、JISSスタッフには必要であると思います。そして、JISSで働くために最も大切なのはコミュ ニケーションスキルです。一人では何もできません。JISSはスポーツ医・科学に関する専門家集団であり、我国のスポーツ医・科学の最前線です。選手のた めに何ができるか、何をすべきか、そのためにたゆまぬ努力をし続ける覚悟はあるのか・・・。JISSで働くには覚悟が必要なのです。

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