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「山の日」制定記念シンポジウム みんなで「山の日」を考えよう!」

 平成27年度のJAPAN SPORT NETWORK事業として、10月4日(日)に「「山の日」制定記念シンポジウム みんなで「山の日」を考えよう!」を開催いたしました。詳細は下記のとおりです。 

開催概要

日時  平成27年10月4日(日) 13:30~16:25 
場所  栃木県総合文化センター 特別会議室
主催 独立行政法人日本スポーツ振興センター 
共催  栃木県、栃木県「山の日」協議会 
後援 とちぎテレビ、下野新聞社、栃木放送、FM栃木
参加人数  136名 

目的

 本シンポジウムは平成28年8月11日から新たに国民の祝日となる「山の日」を多くの人に周知するとともに、登山や自然に親しむことを通じて地域の活性化を考えることを目的として、JAPAN SPORT NETWORKの参加自治体であり、山に対する独自の取組を行っている栃木県と栃木県「山の日」協議会にご協力いただき開催しました。

シンポジウム概要

13:30-13:40 〈開会挨拶〉高谷 吉也(独立行政法人日本スポーツ振興センター 理事)
〈共催者挨拶〉喜内 敏夫 氏(栃木県「山の日」協議会 会長) 
13:40-14:30  〈講演〉
・テーマ:「本当に役立つ安全登山の極意~遭難対応と遠征の経験から~」
講演者:大城 和恵 氏(国際山岳医、国立登山研修所専門調査委員、
              北海道警察山岳救助アドバイザー、
              三浦雄一郎氏エベレスト世界最高齢登頂遠征チームドクター)
 
14:30-14:40 「とちぎの元気な森づくり」について
(栃木県 環境森林部 環境森林政策課 環境立県戦略室長 新井 有明 氏) 
14:40-14:50   〈休憩〉
14:50-16:20 〈パネルディスカッション〉
・テーマ:「豊かな自然を活かした地域づくり~「山の日」を地域の活性化につなげよう~」
​コーディネーター:渡邉 雄二 氏(国立登山研修所アドバイザー)
​パネリスト:
大城 和恵 氏 
​神島 仁誓 氏(日本山岳会会員、那須塩原市教育委員長、圓光寺住職)
​喜内 敏夫 氏(栃木県「山の日」協議会会長)
​黒川  惠 氏(アルパインツアーサービス株式会社取締役会長)
16:20-16:25   〈閉会〉


主催者挨拶

 日本スポーツ振興センター理事の高谷から、シンポジウムを開催するに至った趣旨と「山の日」制定を契機に登山の普及振興と地域の活性化について取り組み、本シンポジウムをきっかけとして安全登山の重要性や「山の日」の意義等が再認識されることを期待する旨の挨拶がありました。   
 日本スポーツ振興センター 高谷

共催者挨拶

 栃木県「山の日」協議会会長の喜内敏夫氏からは、数々の名山や美しい自然に恵まれた栃木県が発信源となり国民の祝日である「山の日」制定の動きに繋がったことは喜ばしいことであり、この祝日を契機として、山の恩恵に感謝し、山を守り育てるといった機運をさらに醸成していきたいというご挨拶をいただきました。   
栃木県「山の日」協議会  喜内氏

栃木県からの情報提供:「とちぎの元気な森づくり」について

 栃木県が取り組んでいる「とちぎの元気な森づくり」事業について、栃木県環境森林部環境森林政策課環境立県戦略室長の新井有明氏からご紹介いただきました。
この事業は、天然林の減少に伴う造林が拡大された結果、手入れの届かない森林が増えてきたことから、地球温暖化対策等、環境や森林の公益的機能を重視する住民の増加などにより、「とちぎの元気な森づくり県民税」を平成20年度から導入し、森林の有する公益的機能の回復と、里山林の整備を通じて森林を守り育てる人材の育成等を進めています。

 具体的には、以下の3つの事業を行っています。
 ①奥山林整備事業
  ⇒荒廃している、スギ、ヒノキ等の人工林を元気な森に再生
 ②里山林整備事業
  ⇒民家の周辺に残る里山林を整備して、明るく安全な森林に整備
 ③森を育む人づくり事業
  ⇒県民が広く森づくりに参加できるよう支援
  ⇒森とのふれあいや木を使うことを通じ森林の大切さを普及啓発

 平成20年度から始まった事業は、これまでの実績(見込み)として、約22,300haの奥山林の整備や約3,400haの里山林の整備のほか、森を育む人づくり事業として机・椅子を12,900セット、木製ベンチ2,000基の配布、公共オープンスペースでの木材利用等を積極的に行っているとのことです。
 こうした事業を通じて、栃木県では大切な森林を、県民全体の理解と協力の下に守り育て、元気な森を次の世代に引き継いでいくために、今後も「とちぎ元気な森づくり県民税」を有効に活用していくとの説明に、参加者からも「わかりやすく説明を聞けてよかった」「事業の内容が理解できた」との声がありました。

基調講演:「本当に役立つ安全登山の極意~遭難対応と遠征の経験から~」

 日本初の国際山岳医であり、三浦雄一郎氏のエベレスト世界最高齢登頂や日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ」のイモトアヤコ氏のマナスル登山にも同行したことで有名な大城和恵先生による基調講演では、「本当に役立つ安全登山の極意~遭難と遠征の経験から~」と題して、北海道山岳遭難救助アドバイザーや数々の遠征でのご経験を基に貴重なお話を伺う事ができました。
山岳遭難死の原因として多く見られる、「低体温症」と「心臓突然死」についてご説明いただきました。
 まず、低体温症を疑った時には、判断項目として、「ふるえがあるか」「意識が正常かどうか」「脈と呼吸があるか」に注意すべきとのことでした。そして、低体温症になった場合の体温を上げる方法として以下の4ヶ条を必ず覚えていただきたいと強調されました。

①「食べる 」
 とにかく炭水化物であること。中でも、低体温症の場合には温かくて甘い飲物が良く、大城先 生はフリーズドライの「おしるこ」を勧めていました。また注意点として、カフェインの入ったものは利尿作用があるため避けた方が良いとのことでした。

②「隔離」
 まず、濡れた衣服を脱ぐことを強調されました。体温低下を防ぐ方法として、テントを張り、グループシェルターを使う等の方法を紹介し、隠れる場所が何もないところでは、「ハイマツ」(針葉樹)の中に入る事で風をしのぐ方法を紹介し、自然の地形を上手く利用して暖をとることの大切さを説明していただきました。

③「保温」
 温かい衣服を着ることはもちろんですが、大事なのは頭と首をしっかり隠すことであると強調しました。

④「加温」
 筒形のものだと身体との接触面が1カ所で面積的にわずかなため、十分な加温ができないとのことで、特殊なフィルムを使用した水筒であるプラティパスに熱湯を入れて、体幹に置き、胸や内臓を温める方法を説明しました。また、現場で使用されている実践的な方法として、低体温ラッピング方法を紹介しました。

これらの4ヶ条は、低体温症になった人にも、低体温症にならないための予防策としても有効なものであると強調されました。

 続いて、山で起こると非常に危険な「心臓突然死」について、予防を含めた観点から解説されました。中高年で起きる心臓突然死は、大部分が心筋梗塞で、心筋梗塞から心停止を起こした人のうち、約半数は苦しいと感じてから1分以内に心臓が止まっており、「山で心臓発作が起きれば、ほぼ助からない」と強調されました。心臓突然死を起こす原因としては、過去に心筋梗塞を起こしたことがある、狭心症、糖尿病、コレステロールが高い、高血圧等の病歴があることをあげられました。特徴として、34歳以上の男性に多く、普段から運動していない人が起こしやすいとの説明がありました。また、三浦雄一郎氏の遠征に同行した際の経験から、登山の初日は身体が緊張していて危険が高まるということを強調されました。その他の要因として、ストレスや不安・睡眠や食事の不足・風邪なども大きく関わると説明されました。(ちなみに、三浦雄一郎氏はストレスを抱えず、かなりマイペースな人柄だとのことです。)
 心臓突然死を防ぐには、低体温症のように知識や装備を備えて登山にのぞめば助けられるというものではなく、起こさないようにするためには、登山前から身体の管理が必要とのことでした。山に登るまえに事前に行っておくべきこととしては、検診(一般的な健康診断ではなく、運動負荷を含めた心臓の検査を行う等)の重要性をあげていました。また、登山の初日は半分のスピードで歩くこと 、水分は30分毎に摂取すること、しっかり食べること、日頃からの運動(階段の昇降等の筋力を鍛えるもの)等も重要であると強調されました。
三浦雄一郎氏、イモトアヤコ氏の遠征に同行した際のエピソードを交え、すぐに実践できる分かりやすい事例を挙げての解説に参加者は熱心に耳を傾けていました。

            大城氏

パネルディスカッション:「豊かな自然を活かした地域づくり~「山の日」を地域の活性化につなげよう~」

 パネルディスカッションは、国立登山研修所アドバイザーである渡邉雄二氏をコーディネーターに、大城和恵氏、神島仁誓氏(日本山岳会会員、那須塩原市教育委員長、圓光寺住職)、喜内敏夫氏 、黒川惠氏(アルパインツアーサービス株式会社取締役会長)の4名をパネリストに迎えて行われました。
 まず冒頭、渡邉コーディネーターから、開催に当たり、栃木県における「山の日」を巡る取組の概要と、今回のパネルディスカッションの趣旨について簡単にご説明いただいたあと、神島氏、喜内氏、黒川氏の順番に一人10分程度でお話をいただき、最後に大城氏から3人のパネリストのお話を受けてのコメントをいただきました。概要は次のとおりです。
 
 パネルディスカッションの様子
 
<神島 仁誓氏>
・山の日は8月11日でお盆の前、学生は夏休み中ということもあり、祝日という意識をもたれない可能性もあるが、ぜひ山の日が注目されるように皆さんにもご協力いただきたい。

・栃木県では子ども達は山に囲まれ、山が身近にある恵まれた環境の中で育っているが、県下のある中学校のアンケート調査で登山やハイキングが「好き」が44%、「あまり好きではない」が56%との結果であった。山に親しんでいる栃木県内の子ども達であっても、それほど山に関心がないという状況。私たちが思っているように自然に触れるというのは難しいのかもしれない。

・高校教師時代は山岳部の顧問をしていたが、都心の学校のほうが山岳部の設置率が高いような気がしている。山岳部の生徒たちに聞いてみると、親が山登りをしているとか、子どものころに山に連れて行ってもらった等、山や登山に親しんだ経験を持っている場合が多いように感じた。

・昨今は、多くの自治体がふるさと創生と称して定住促進を掲げているが、子どもたちを地域への愛着を持った子どもに育ててこそ地域創生が達成されると考える。子どもたちには、地域や自然に親しみ、地域に愛着を持ってほしい。

・「山の日」の制定を機に、行政を巻き込んで、身近なところから登山、山登り、自然体験などの活動が盛んになることを期待している。
<喜内 敏夫氏>
・「山の日」制定に向けた全国「山の日」制定協議会の取組、船村徹氏(栃木県塩谷町出身の作曲家)が「海の日があってなぜ山の日がないのか?」と素朴な発言をしたことがきっかけになった。また、栃木県山岳団体、栃木県山岳連盟、栃木県勤労者山岳連盟、日本山岳会栃木支部という4つの団体で栃木県「山の日」制定協議会を作った経緯があり、栃木県が全国的にも中心となって「山の日」制定に取り組んできた。

・「山の日」制定後の栃木県「山の日」協議会の課題として、来年具体的にどのような取組をするのかがまだ固まっていないということがある。山に親しむ機会を増やし、山に感謝するという「山の日」の意義の再確認をし、「山の日」制定をお祝いすると共に、今後「山の日」の意義が定着する方策の情報を共有したい。

・栃木県には温泉やおいしい食べ物があり、こうした資源を活用していくべき。ただ、登山者が増えればトイレの問題など、課題も出てくる。多くの人に来てもらいたいが、そうした課題をどう解決していくかも重要である。
<黒川 惠氏>
・「海の日」との関係について、私たちは「海の日」の恩恵を受けて登山に親しんできたといえる。つまり、祝日法の改正により海の日が7月20日からハッピーマンデーとして7月第3月曜日になったことで、三連休となり、登山を楽しんできた。今回「山の日」ができて、「海の日」も固定した日に戻そうという動きがあったが、旅行業界としては連休がなくなっては困るという立場で、今は「海の日」も積極的にPRしている状況。ぜひ参加者の皆さんにはハッピーマンデー応援団になっていただきたい。

・登山を楽しむ20代から40代の男女が増えていると感じている。特に女性の進出が目立っており、私の会社でも「女子中級」「レディース」といった女性対象の登山教室を開催している。そうした人たちが、都会を離れて、田舎の村の里山や低山に出かけてくれることで、今は日本アルプスの有名山岳だけが私たちの仕事場ではなくなった。

・自然を楽しむには安全管理が重要である。安全に登山を楽しむために、危険を察知する力、予見する力がリーダーには必要となる
<大城 和恵氏>
・小さい頃は裏山には遊びに行ったが、遠くの山に遊びに行くことはできなかった。それは、車などの移動手段がないから。自分で登山に行くようになったのは時間とお金が作れるようになってからだった。人々が山に行くような仕掛けとして、イベントを企画してはどうかと考えている。小学生であれば夏休み宿題ツアーのようなものとか、中高年であれば健康を意識したものなど、ターゲットによっていろいろ考えられる。とにかく、山が楽しいという仕掛けを作り、山に興味を持ってもらうことが大事ではないか。

・登山道の整備について、登山者に協力してもらうというのがよいと思う。資材は行政が用意したとして、それを登山者が運んで、どこかに自分の名前を刻むなどすれば、よい思い出にもなる。登山者が参加してくれるような、参加意識の醸成が大切である。

 4人のパネリストからのコメントを受けて、残りの時間は参加者とのディスカッションを行いました。参加者からも活発なご発言があり、「山の日」を契機とした地域の活性化に向けたヒントや、山をはじめ自然に親しむための安全対策などへの留意事項について、貴重な情報交換の場となりました。 

<ご参考>
当日の様子は、下野新聞及びとちぎテレビにて紹介されました。
 ■下野新聞
http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/utsunomiya/news/20151005/2103547
 ■とちぎテレビ
http://www.tochigi-tv.jp/news2/?date=2015-10-4

 

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