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名古屋☆通信 第109号(2017.03)

【福井県】坂井地区養護教諭研究会中学校部会の事故防止の取組
 
 福井県の坂井地区養護教諭研究会中学校部会(当該部会は、あわら市及び坂井市の7つの中学校で構成。以下「中学校部会」という。)において、「災害(傷病)発生の実態を危機管理に生かすための取組 ~坂井地区7中学校のデータを活用して~」と題して調査研究し、平成27年度に開催された「第63回 福井県養護教諭研究協議会」の第3分科会で発表されました。
 この発表の中で、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」という。)が提供する統計情報等が活用されましたので、その活用事例と併せて中学校部会の事故防止の取組を紹介したいと思います。
 また、この取組については、坂井市立高椋小学校の畑山律子養護教諭(平成27年度は、坂井市立丸岡南中学校に在籍)に取材をさせていただきました。

災害(傷病)発生の実態を危機管理に生かすとは

 私達、養護教諭が小学校勤務から中学校勤務へと初めて校種が変わった際、戸惑うことの一つに大会救護への対応があります。それぞれの運動種目に多く発生する災害(傷病)は何か、ケガの応急手当にはどのようなことに気をつけて大会救護にあたれば良いのかなど、経験者に指導助言を仰ぐケースがあります。
 坂井地区の中学校間における養護教諭の情報交換は、口頭伝達が主であり、養護教諭一人ひとりの経験等が十分に情報共有できていませんでした。そこで、日常の応急処置活動について、日々の災害発生状況をデータ化し、実態を分析することで災害発生の傾向や課題が明らかになり、それを大会救護及び日常の執務や保健指導等に生かすことができるのではないかと考えました。

「災害発生状況調査」によるデータベースの構築 

 まず、実態把握として、「災害発生状況調査」を実施しました。これは、学校の管理下で発生した災害(傷病)で医療機関を受診したものを対象に、災害共済給付の申請に必要な「災害報告書」の項目に、「背景要因」など独自の項目を設けた「校内災害発生届(※1)」による共通フォーマットで情報を集計しました。
 この集計は、坂井地区7つの中学校のデータを学校単位及び坂井地区全体で集計し、「災害共済給付オンライン請求システム(以下「システム」という。)」から取得できる全国の統計情報と比較し、災害の傾向を確認しました。 
     校内災害発生届                            

災害の傾向の確認 

<各学校における災害の傾向>
 「各学校の実態(※2)」は「災害(傷病)発生の実態を危機管理に生かすための取組」の説明資料の一部分です。
 各学校における災害の傾向としては、坂井地区の中学校の内、A中学校のように全国及び坂井地区全体と比べても、休憩時間中での災害の発生率が高いことが確認でき、客観的な実態把握が行えました。 
休憩時間における災害発生率の比較のグラフ 
<坂井地区の災害の傾向>
 「地区の実態(※3)」も説明資料の一部ですが、坂井地区全体と全国を比較した災害の傾向では、体育的部活動での災害の発生率が高いことが確認できました。 
場合別における災害発生率の比較
 データベースを構築するための情報集計等は大変でしたが、システムから全国版の統計情報が簡単に取得でき、全国と各学校及び坂井地区全体との比較が行えるデータベースが構築できたので、坂井地区の中学校の養護教諭たちと苦労して作成した甲斐がありました。 

「災害発生状況調査」からケガの予防へ

 上記の「災害発生状況調査」の結果から、坂井地区全体として、以下のことが見えてきました。
(1)システムから取得した全国の統計情報との比較からは
  ●体育的部活動での災害発生率が高い。
(2)「校内災害発生届」による災害事例の分析からは
  ●競技ごとにケガの起こり方に特徴がある。
 この2点の課題が明らかになったことから、部活動におけるケガの予防に繋がる指導資料「部活動応援号」を作成することになりました。

「部活動応援号」の発行へ

 この「部活動応援号」とは、各学校での部活動におけるケガの予防を目的とした、部活動顧問が活用する坂井地区共通の指導資料で、体育的部活動13種目分を作成しました。また、「部活動応援号」を用いた生徒への指導では、部活動顧問と生徒一人ひとりがケガの予防の大切さを「一緒に考える」ところに重要な意味を持たせています。
 ここに掲載した野球部の「部活動応援号」は、ほんの一例で、体育的部活動の種目別のほかに「ケガの応急処置・予防編」や「スポーツ障害編」も作成しています。
 野球部部活動応援号
※統計情報をはじめ、野球部で発生しやすいケガの特徴などが分かりやすくまとめられています。

取組の成果 

 平成25年度及び26年度と2年間の取組を実施してきて、坂井地区全体の災害発生件数が26年度は25年度に比べ120件減少し、特に体育的部活動での災害発生件数が72件も減少しました。
 この結果は、中学校部会での事故情報の収集から分析、さらには事故防止の指導に関する実践の成果だと思います。
 災害発生状況の比較のグラフ

平成26年度スポーツ事故防止対策推進事業のセミナーに参加して 

 平成26年度に大阪で開催された、JSC主催のスポーツ事故防止対策推進事業・セミナー「学校でのスポーツ事故を防ぐために」に坂井地区からも数名が参加しました。 
 その時の「事故に対する意識を変えることが大切である」という言葉がとても印象に残っています。

 「学校でのスポーツ事故を防ぐために」のスライド

左のスライドは、第3分科会で発表したときのものになりますが、私たちの中には「スポーツにはケガはつきものだ」、「避けることはできない」という意識がどこかにあります。しかし、「ケガは予測ができ、予防可能である」という考えにシフトチェンジしていかなければなりません。
そして、学校での事故は科学的に状況を分析し、記録・研究を行えば予防につなげることができると言われています。今回、私たちが取り組んできたことを今後もできる限り継続し、保健指導や保健管理面で活用して、事故防止につなげていくことが必要だと感じています。 

※「スポーツ庁委託事業 スポーツ事故防止対策推進事業」については、バナーをクリックしてご覧ください。 
 「学校でのスポーツ事故を防ぐために」バナー

終わりに 

 この取組を通じて、部活動顧問の災害(傷病)の防止等の危機管理に対する意識が今まで以上に高まり、また、生徒は、ケガやスポーツ障害予防に対する意識も高まったことから、体育的部活動における災害発生件数が減少したことは確かなことです。なにより、生徒自身が栄養や睡眠をとって体調を整えたり、今まで何気なく行っていたストレッチにケガの予防効果があると理解して実践するようになったり、適切な応急処置でケガの重症化を防ぐようになったりと生徒一人ひとりが「理解し、考え、行動する」が根付いてきていることがとても嬉しく感じました。
 また、今回の取組は、中学校部会の養護教諭の協力なくしては、実現しえなかったと思います。あらためて仲間に感謝します。 
   

取材を終えて

 今回紹介した、坂井地区独自のデータベースとJSCの統計情報も組み合わせて分析するという取組で、実際にケガの発生件数の減少も見られたとのことで、データ分析の重要性について考えさせられました。
 また、今回の取組にJSCが提供する統計情報が活用されたことや、セミナー「学校でのスポーツ事故を防ぐために」で紹介しているセーフティプロモーションの考え方「事故や事件などによる外傷は予防できる」の基本理念が中学校部会で共有されたことには大変有難いと感じています。JSCでは、今後もこのような事故防止取組を共有することにより事故防止を支援してまいります。 

 

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