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広島もみじ通信 第60号(2016.3)

統計情報システムの活用

                                       ‐岡山県津山市立久米中学校‐

 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下、「JSC」という。)では、学校の管理下で起こった児童生徒の災害に対して、災害共済給付を行っています。この災害共済給付を通じて得られた事故情報を集計し、オンライン請求システム内にある統計情報システム(以下、システム)より、『82』の帳票として出力できます。
 今回は、このシステムから得られた情報を活用して「スポーツにおける外傷・障害の未然防止」について取り組んでいる岡山県津山市養護部会中学校部会のうち、津山市立久米中学校の養護教諭の河村先生に伺ってきました。

 
取組の背景と内容は?

 
●ケガの実態把握

 平成21・22年度に津山市内の小中学校のヒヤリ・ハット事例を調査した際、「中学校に特有の外傷や障害が多いのではないか」、「部活動や教科体育でのケガが多いのではないか」ということが特徴として見えてきました。そこで、ケガの実態を把握することから始めました。学校の管理下のケガの実態把握のため、津山市内の中学校8校、生徒数3,063人を対象に平成25年4月から平成26年2月までの保健室来室記録から抽出した外傷、障害の事例2,495件について調査しました。ここでシステムから出力される82帳票から「負傷・疾病の場所、場合、種類、部位」などのデータを活用しました。保健室来室記録をJSCの統計と照合しやすいように作り変えました。
 また、実態把握のひとつとして津山市の中学校全8校の運動部に所属する2年生を対象に「運動の安全意識等に関するアンケート」を行いました。その分析の結果、ウォーミングアップはしているもののクーリングダウンをしていない生徒が約半数いることが分かりました。
 
   
   
   
 研究発表資料 場合別発生件数割合 
   
外傷・障害の種類別発生割合  アンケート用紙 
 

●分析の結果

 保健室来室記録とシステムの統計情報との照合、分析から分かったことは、
・スポーツによる外傷・障害が約半数を占めている。
・場合別発生件数から見ると教科体育と体育的部活動時の発生率が高い。
・センターの申請内訳では教科体育より、体育的部活動で起こるケガの割合の方が多い。

●対策

 これらを踏まえ、吉備国際大学保健医療福祉学部の川上照彦教授に「外傷・障害の未然防止」についてアドバイスをいただき、生徒自身が主体的に予防に取り組む姿勢を育てるため、下記6つの実践を体育的部活動の顧問の先生方と協力して行いました。

(1)  体の状態を意識させる
(2)  スポーツ障害についての理解を深めさせる
(3)  ウォーミングアップとクーリングダウンの意義と方法の理解を深めさせる
(4)  クーリングダウンの定着を図る
(5)  スポーツと栄養の関係についての理解を深めさせる
(6)  危険を予測する力を育てる

 特に運動終了後にクーリングダウンをしない場合、約1時間で筋肉は硬く変化します。硬くなった筋肉をそのままにすると翌日の運動に影響を与えることになります。運動直後でなくてもその日のうちに行うと効果的であることをご指導いただきました。           

 

 ウォーミングアップがケガの防止に役立つように、クーリングダウンもまたケガの予防に有効であることを生徒に知らせていく必要があることが分かりました。

●対策の結果

 実際、運動後にクーリングダウンを導入すると年々、身体の痛みを訴える生徒の数が減少しました。その後のアンケートでも多くの生徒が「身体の痛みが楽になった」「疲れが残りにくくなった」など、自分の身体への気づきとともに、クーリングダウンの意義を肯定的に捉えていることが分かりました。

 その一方で実践後の課題としていくつか見えてきたこともあります。

(1) 部活動指導者との連携
 知識を伝えるため、養護教諭のみでなく部活動指導者と連携して取り組むことが大切である。

(2) ウォーミングアップとクーリングダウンの意味付け
 ウォーミングアップやクーリングダウンを行いながら、同時にその意味付けを行っていくことが必要であり、それを生徒に指導する部活動指導者がその意味を十分理解する必要がある。

(3)  部活動指導者から生徒への声かけ(クーリングダウンやストレッチに対して)
 指導者が声掛けを行うことで、クーリングダウンやストレッチへの意識付けがより高まるものと思われる。また、指導者だけではなく、養護教諭も健康チェックシートをチェックすることで次項の(4)につながる。

(4) 養護教諭の個別指導
 保健室来室者記録からケガをしやすい生徒の把握ができているため、個別に指導がしやすくなるという利点がある。将来にわたってQOL(Quality of Life:生活の質)が低下するようなケガをしないよう、生徒のケガの未然防止意識を高めるとともに、障害について十分理解して指導にあたらなければいけない。

(5) 医療機関との連携
 痛みが続く時やケガをした時に、正しい対処ができるよう医療機関との連携も考えていきたい。
                       

取材を終えて 

 
 今回、ご紹介したのは平成26年度「岡山県学校保健研究大会 中学校部会」で発表された内容ですが、発展させたものを平成27年度岡山県中学校養護教諭夏期研修会でも発表されており、実践を続けられていました。
 取材中に河村養護教諭も「先生方の協力のおかげです。」とおっしゃっていましたが、このような研究・実践は一人でできるものではなく、校長先生をはじめとした全ての教職員の協力が不可欠であると感じました。
 久米中学校は学校全体がとても落ち着いた雰囲気で、玄関横の生徒会掲示板では、手書きの文字やイラストが来訪者の目を引き、約30年前に生徒が作詞、先生が作曲した生徒会歌「思いやりの歌」が歌い継がれているそうです。また、平成27年度には生徒会マスコット「こうと君」が誕生する等、先生方と生徒達の良い関係が伺え、このようなところも研究に役立ったのかなと感じました。
 JSCでは今後も事故防止に係る教材や統計情報の提供等、児童生徒が安心して学校生活を送ることができるようサポートしていきたいと思います。     
      
   
  久米中学校生徒会のスローガン  生徒会マスコット こうと君
 


 
 
◆ 利便性向上のため統計情報システムの機能を追加しました!

 『災害共済給付オンライン請求システム操作マニュアル~2010~』の P186

➊クロス集計(82帳票)で月の範囲指定ができる検索条件を追加しました。

 対象期間が従来の年度だけでなく、4月から9月までといった期間を設定した
帳票を出力できます。

➋新学校種別として「幼保連携型認定こども園」を、統計情報の学校種別に追加しました。

 
 
くわしくは 「学校安全ナビ25号」をご参照ください

◆ 統計情報の活用事例を募集しています!
 
 JSCでは、設置者、学校において統計情報システムから出力される「82の帳票」等のデータの活用事例を募集しています。
ぜひ、地域事務所までご一報ください。
 


 

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