学校の管理下における 歯・口のけが防止必携

 

 
歯・口のけがの防止の重要性
☆歯・口のけがを防止するために

 学校において子どもが安全で健康な生活を送ることは、とても重要です。そのために、交通事故や水の事故などと同様に、歯・口のけがについても子どもの安全を脅かすような事故が起こらないためにできることがあります。指導者が歯・口のけがのことを学び、子どもに知識や防止法を指導することで確実に事故を減らすことができるのです。


☆歯・口のけがの防止の重要性

(1)障害見舞金に見る歯の障害の発生率の高さ

 近年、学校では歯を失う原因として、むし歯や歯周病といった病気ばかりでなく、外傷による歯・口のけががクローズアップされています。日本スポーツ振興センターが行った障害見舞金の給付件数の中では、歯・口のけがによるものが最も多く、全体の約3 割を占めています。また、平成13年度の高等学校の歯の障害件数は、高校全体(262 件)の半数(134 件)に達しています。

 
 
 


(2)歯・口の健康つくりの価値観の向上

 学校歯科保健の歴史をみると、歯・口を教材として行う保健教育は、児童生徒の教育の題材として極めて優れた内容を備えています。口の中は観察が容易であり、児童生徒が理解しやすく、問題発見解決学習に適しているからです。昭和53年に文部省は『小学校 歯の保健指導の手引』を発刊し、平成4年に同改訂版を発刊して、主として保健教育の保健指導の題材として、歯科保健の活用を推進してきています。また、平成16年に文部科学省は、『「生きる力」をはぐくむ学校での歯・口の健康つくり』(発行:日本学校歯科医会)を発刊し、保健教育における歯科保健の意義を示しています。学校歯科保健活動の活性化に伴い、子どもたちが健康な歯・口の大切さを理解し、生活の中でその実践に目を向けるようになってきています。こうした学校歯科保健活動の成果として、子どもたちが自分の歯・口の健康を自分で守り育てる基盤が形成されてきたのです。歯・口の健康つくりは、人間性の陶冶に優れた効果を発揮するなど「生きる力」の向上と全身の健康つくりを考える教育として全国的に成果を上げてきています。

(3)生活の質(Quality of Life:QOL)の低下防止

 歯はあるのが当たり前で、普段は気にも留めないで生活していますが、歯を失うことで食事や会話に支障をきたしたり、顔の表情が変化して、人に与える印象が変わったりするなど、肉体的、精神的なQOL の低下はもちろんのこと、社会的生活にも大きな影響を及ぼします。歯・口のけが防止のための安全教育・安全活動によって、事故の発生を減少させ、QOL やスポーツパフォーマンスの低下を防止できます。

(4)歯・口のけが防止のための安全教育・安全管理

 歯・口のけがの現状や歯科保健教育の成果を背景に、安全教育の新しい概念として学校歯科からみた安全活動が新たに注目されてきました。それは、病気ばかりでなく、アクシデントによる外傷に対して自らの体を守るという習慣や態度を養うための安全教育・安全管理に関する活動を学校教育の中に取り入れ、学校歯科保健と同様の成果を期待するからです。


☆歯・口の安全教育の重要性

「歯は、失ったら取り戻せない大切なもの」

 普段何も意識しないで使っている歯の重要性を子どもたちに認識してもらい、「歯・口は大切なんだ」「歯がなくなったら困る」という気持ちを抱かせなければ、歯・口のけが防止のための安全教育は功を奏しない。


☆歯・口の多様な働き

 歯は生まれた時にはまだ生えていない。乳歯はだいたい生まれて6か月ぐらいから生え始め、3歳頃には20 本の乳歯がすべて生え揃う。永久歯は下の前歯や第一大臼歯が6歳ぐらいから生え始め、乳歯が次第に抜けて15 歳頃までには親知らず(智歯)を除いた28 本が生え揃う。永久歯は失ったら二度と元へは戻らない。小学校時代には、この歯の交換を題材として、歯や歯の働きなどについて学ぶことも大切である。

(1)食べる(咀嚼そしゃく

 人間は口から食物を食べて生きている。歯の形はそれぞれの働きに応じた形をしている。食べ物を咬み切る(前歯)、引きちぎる(犬歯)、細かくすりつぶす(小臼歯、大臼歯)役割がある。その後、唾液と混ぜ合わせて食塊をつくり、飲み込み(嚥下えんげ)しやすくする。食べる時に歯がなかったら、これらのことは何もできない。食べることはただ栄養摂取するためだけでなく、食べるものを良く見て、匂いを嗅ぎ、歯触りを楽しみ、音を聞き、味わって美味しく食べることが重要である。

 
 
 


(2)話す(発音)

 話しをするにも歯は重要な働きをしている。「サ、シ、ス、セ、ソ」「タ、チ、ツ、テ、ト」「ラ、リ、ル、レ、ロ」は、歯と舌によって構成される音である。口を開けた状態で舌を動かさないで実際に試してみよう。「人と豊かに話すことができる」のが大切なことである。

(3)顔貌形成がんぼうけいせい(顔・かたちをつくる)

 人の顔の感じにも歯は大きな影響を与える。きれいにならんだ白い歯は人に好感を抱かせるが、前歯が一本なくなっただけで顔の感じが全く変わる。歯が全くなくなると口元にはしわがより、老けた感じになる。
 また、「明眸皓歯めいぼうこうし」「切歯扼腕せっしやくわん」「歯をき出す」「歯がゆい」などのように昔から歯が心身の状態や感情を表す表現に多く使用されている。健康な歯を維持することは心身の健康や社会性にも大きく関わっている。

<歯の傷害・障害の定義>
歯の傷害とは・・・歯の外傷、すなわち歯を外力によって傷つけ損なうことをいう。
歯の障害とは・・・歯の傷害の結果、歯がなくなり、その機能を果たさない状態をいう。

 


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